計画研究
1.南海古期付加体の挙動を求めるべく、熊野海盆の地質構造解析を実施した。その結果、顕著な広域不整合(>1 Ma)を境に、それ以降、周辺の造構運動とともに急激な堆積が進行し、泥火山の活動が始まったことが分かった。また同時期には、海側から伝搬する古期付加体のブロック運動があった。更に、数十万年前を境にして、熊野海盆はほとんど変形しておらず、外縁隆起帯の発達休止とともに、熊野海盆は現在静穏期である可能性が示された。2.高知県白亜系四万十帯西土佐湾における地図スケールの弾性波速度の分布を検討し、先行研究によるビトリナイト反射率(およそ150~230℃の範囲)との相関を検討したところ、砂岩は相関がなく、泥岩は強く相関した。これは地震発生帯浅部において、砂岩と泥岩の続成過程がまったく異なることを示しており、物性のコントラストが岩相に強く依存していることを示唆する。3.分岐断層の3次元形態から詳細な走向傾斜パターンと曲率分布を解析し、断層帯上限層準と下限層準を追跡することで断層帯の厚さ分布を得た。さらに断層帯上限層準での3次元アコースティック・インピーダンス(AI)分布を算出した。これらは、解析領域内での分岐断層が複雑な3次元形態を示すこと、東側地域で厚さが増すこと、東側地域で低AI領域が見られることを示している。4.沈み込みインプット掘削によって得られたコア試料の分析データを統合し、紀伊半島沖の四国海盆に分布する火山物質の供給源を特定した。14 Ma以降に熊野酸性岩類からの火山物質の供給が、7-8 Maには伊豆小笠原背弧域もくしは伊豆衝突帯からの火山物質の供給が開始したことが判明した。5.IODP南海トラフ地震発生帯掘削ステージ3に参加し、VSP(Vertical Seismic Profiling:鉛直地震探査)を補助する坑内原位置P波速度データを取得した。
2: おおむね順調に進展している
これまで研究は順調に進んでおり、3次元反射法地震探査データを用いた高精度地殻構造イメージング処理を行った結果、巨大分岐断層付近の詳細構造が得られた。IODP南海トラフ地震発生帯掘削ステージ2と3に参加し、新規のコア試料と孔内検層データを取得した。巨大分岐断層の反射振幅を計算した結果、分岐断層近傍の岩石物性に不均質があることが明らかになった。巨大分岐断層を対象に3次元構造解釈を行い、東側地域と西側地域で巨大分岐断層の形成履歴が異なることを見出した。中間評価においても期待以上の実績を挙げたと高い評価を受けた。
IODP南海トラフ地震発生帯掘削計画の遅れと変更により、平成24年度のステージ3においてVSP関連探査を実施した。一方、ステージ3の掘削が海底下約2,000 mで中断したため、巨大分岐断層に達する掘削は平成25年度以降に実施されることになった。従って、巨大分岐断層やプレート境界断層の検層データが本研究期間中に取得できない可能性が高く、それら断層に沿った3次元物性解析も困難な状況となった。そこで、今後はVSP補助のP波速度データの解析、巨大分岐断層のように津波地震を引き起こす浅部プレート境界断層(デコルマ)の構造解釈と物性解析に焦点を絞る研究計画に変更する。さらに、東北地方太平洋沖地震の震源域で得られる地殻構造と物性データを解析し、南海トラフと日本海溝におけるデコルマの形成プロセスと破壊伝播に関する比較研究を行う。
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