計画研究
1.平成23年秋に宮城沖の日本海溝軸近傍において取得された高分解能反射法地震探査データの解析、解釈を行なった。その結果、東北地方太平洋沖地震のような海溝軸まで滑りが達する巨大地震や、プレート沈み込みに伴って発達してきたと考えられる海底下構造を発見した。2.熊野海盆の大構造解析を引き続き行った結果、現在の海盆全域にわたる広域不整合が1 Ma以前に形成されて以降、顕著な造構運動とともに海側からのドミノ式褶曲帯が形成されたことを確認した。これは下位の古期付加体のブロック運動を示している。3.NanTroSEIZEで得られた熊野沖南海トラフの掘削試料、白亜系四万十帯メランジュゾーン及びコヒーレントゾーン、延岡衝上断層掘削コアの上盤・下盤の弾性物性と間隙率の測定を行った。この結果と反射法データ物性との対比から、浅部デコルマ沿いの有効圧が約10 MPaであること、巨大分岐断層の上盤で有効圧が約50 MPaとやや下がっていることを明らかにした。4.南海トラフ巨大分岐断層の詳細三次元形状の解析から、断層は3つのゾーンに区分できることが分かった。表層斜面堆積物からこれらのゾーンの活動性が異なることが分かっている。このことは、断層面の詳細形状から断層活動性を評価できる可能性を示している。5.東北沖地震調査掘削で取得した検層データの解析を行い、海底下820 mの遠洋性粘土層中に存在するプレート境界断層を特定した。南海掘削試料のジルコン粒子の年代測定により、古期大陸と伊豆小笠原弧から南海トラフへの物質供給を推定した。6.東南海地震の震源域へ沈み込む堆積層の物性変化を解明するため、南海トラフのインプットサイトで取得したIODP掘削データと三次元反射法地震探査データとの統合解析を実施した。その結果、沈み込む火山砕屑物層とタービダイト層において、音響インピーダンスと空隙率の有意義な変化が見出された。
2: おおむね順調に進展している
これまで研究は順調に進んでおり、南海トラフの巨大地震発生と関連する前弧海盆、巨大分岐断層、沈み込む堆積層の詳細構造や物性が明らかとなりつつある。また、東北地方太平洋沖地震を引き起こした浅部プレート境界断層の実態も次第に解明されている。
IODP南海トラフ地震発生帯掘削計画の遅れと変更により、平成24年度のステージ3においてVSP関連探査を実施した。一方、ステージ3の掘削が海底下約2,000 mで中断したため、巨大分岐断層に達する掘削は平成25年度以降に実施されることになった。従って、巨大分岐断層やプレート境界断層の検層データが本研究期間中に取得できない可能性が高く、それら断層に沿った3次元物性解析も困難な状況となった。そこで、今後はVSP補助のP波速度データの解析、巨大分岐断層のように津波地震を引き起こす浅部プレート境界断層(デコルマ)の構造解釈と物性解析に焦点を絞る研究計画に変更する。さらに、東北地方太平洋沖地震の震源域で得られる地殻構造と物性データを解析し、南海トラフと日本海溝におけるデコルマの形成プロセスと破壊伝播に関する比較研究を行う。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 12件) 学会発表 (49件) (うち招待講演 4件) 図書 (4件) 備考 (1件)
Geophysical Research Letters
巻: 40 ページ: 1713-1718
10.1002/grl.50364
Tectonophysics
巻: 未定 ページ: 未定
石油技術協会誌
巻: 78 ページ: 28-35
地質学雑誌
巻: 119 ページ: 59-74
Geochemistry Geophysics Geosystems
DOI: 10.1002/ggge.20107
Science
巻: 339 ページ: 687-690
DOI: 10.1126/science.1229379
Island arc
巻: 21 ページ: 53-56
10.1111/j.1440-1738.2011.00806.x
Nature Geoscience
巻: 5
10.1038/ngeo1547
地質学雑誌補遺
巻: 118 ページ: 印刷中
DOI: 10.5575/geosoc.2012
The Contribution of Geosciences to Human Security
巻: なし ページ: 227-236
Proc.AIT-NUS-ITB-KU Joint Symposium on Human Security Engineering
巻: なし ページ: 85-88
巻: 118 ページ: IX-X
超音波テクノ
巻: 24 ページ: 15-19
Preliminary Report Integrated Ocean Drilling Program Expedition 343/343T
巻: なし
DOI: 10.2204/iodp.pr.343343T.2012
Proc. IODP
巻: 334
DOI: 10.2204/iodp.proc.334.2012
http://www-solid.eps.s.u-tokyo.ac.jp/nantro~/