研究領域 | 超深度掘削が拓く海溝型巨大地震の新しい描像 |
研究課題/領域番号 |
21107003
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芦 寿一郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40251409)
|
研究分担者 |
山野 誠 東京大学, 地震研究所, 准教授 (60191368)
辻 健 九州大学, カーボンニュートラルエネルギー研究所, 准教授 (60455491)
池原 研 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 副部門長 (40356423)
坂口 有人 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (80304666)
川村 喜一郎 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (50321675)
|
キーワード | 活断層 / 地震 / 地すべり / 変動地形 / 海洋探査 |
研究概要 |
南海トラフと日本海溝での調査航海の実施と既往データの解析を以下の通り行った. 南海トラフの調査航海:1)熊野沖の浅部地下構造の断面記録・試料を取得し,断層活動による微細構造と堆積物の年代から堆積盆・付加体の変動史を明らかにした.2)熊野沖分岐断層における高密度の熱流量測定によって断層に沿った間隙流体上昇の可能性を指摘した.3)自己浮上式機器による15ヶ月間の長期海底水温計測を行い,水深約2500mでは水温変動が熱流量測定値に有意な影響を及ぼすことが明らかになった.4)熊野沖で地震イベント堆積物,洪水イベント堆積物の比較・認定を行った. 日本海溝の調査航海:1)震源域の浅部地下断面記録を取得し,海底変動に伴う堆積構造を明らかにした.2)震源周辺の陸棚外縁~下部斜面域でタービダイトの広い堆積を認めた.混濁流と堆積層の震動変形との関係の把握が地震性イベントの認定基準になることが分かった.3)津波波源域での潜航調査により地震に伴う海底面のダイナミックな変化を捉えた.4)海底調査で大規模地すべりを明らかにし,今回発生した津波が大規模地すべり現象によって増幅された可能性を指摘した. 南海トラフの試料解析:熊野沖の前弧海盆~海溝底の様々な場所で採取したコア試料の間隙率と剪断強度を調べた.斜面堆積物のみが間隙率に対する剪断強度が低いことが分かった.斜面では定常的な剪断応力・剪断すべりで構成物の組織発達が阻害されている可能性が示された. 日本海溝のデータ解析:1)東北沖地震の津波発生域の反射法地震探査データの解析により津波発生メカニズムの解釈を行った.2)東北日本-千島沈み込み帯の地殻歪みの蓄積解放過程を,地質・測地両面から解析し,地震間の固着が極めて深くまで及んでいること,2011年東北沖地震では固着域の浅部(0~50km)だけがすべったこと,すべり残った深部固着域が存在することが分かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査航海により,当初計画していた項目である,海底試料・浅部地下構造断面記録・熱流量データの取得および機器設置・回収を行うことができた.平成23年度およびそれ以前の航海で取得した試料分析・データ解析についても,当初予定していた地質,地形,地球物理,地球化学の各分析,解析は予定通り進み,断層周辺の変形,流体移動,地すべり,表層地層変形,地震性タービダイトの情報が順調に得られつつある.
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度より2011年東北地方太平洋沖地震に関わる地質現象を含めた研究を開始した.しかし,手法的には同一であり,研究グループ構成員は従来から日本海溝域の調査を行ってきており,研究遂行上の問題は特にない.むしろ,南海トラフ域との地質学的背景の相違を踏まえ,両者を比較する事によりプレート沈み込み帯の変動地形,堆積物変形,断層発達,地すべり発生等の理解がさらに進むと考える.
|