計画研究
1)IODP Exp.315、掘削地点C0002の海底下約1000mから採取されたタービダイト起源の泥質堆積物と半遠洋性泥質堆積物の2試料について、室温、原位置圧力・間隙圧、軸方向の変位速度0.1~10μm/sの低速三軸摩擦実験を行った結果、前者は摩擦強度が大きく(摩擦係数約0.53)摩擦強度がほぼ一定の定常すべりの挙動を示し、一方後者は摩擦強度が小さく(摩擦係数約0.25)すべり軟化の挙動を示した。また、両試料とも変位速度の増加に伴い摩擦強度が増加する速度強化の挙動を示すが、半遠洋性泥質堆積物試料の方がより顕著な速度強化の挙動を示すことが明らかとなった。2)IODP Exp.316、掘削地点C0007の前縁衝上断層帯より採取された4試料について、垂直応力1MPa、含水条件、変位速度25~250μm/sの中速回転剪断摩擦実験を行った結果、全試料が摩擦強度が小さく(摩擦係数約0.2~0.27)速度強化の挙動を示すことが明らかになった。3)IODP Exp.316、掘削地点C0004の泥質堆積物試料を垂直応力1MPa、含水条件で高速回転剪断摩擦実験を行い、変位速度0.13mm/sから異なる加速度(0.13~13m/s^2)で変位速度を加速させた結果,加速度が大きいと(>1.3m/s^2)、変位速度の増加とともに顕著な摩擦のバリア(速度強化)が現れた。また、動的な強度低下が起こり始める臨界すべり速度も、加速度の上昇とともに大きくなる傾向が認められた。4)IODP Exp.316、掘削地点C0004の分岐断層帯と掘削地点C0007の前縁衝上断層帯の試料を用いて、垂直応力1MPa、変位速度0.013,1.05m/sの摩擦実験前後の透水係数を測定した結果、含水条件では摩擦実験後、断層ガウジの透水係数は減少し、変位速度が小さい場合に透水係数が大きく減少した。逆に無水条件では摩擦実験後、断層ガウジの透水係数は増加し、変位速度が大きい場合に透水係数が大きく増加した。
2: おおむね順調に進展している
これまで研究は順調に推移しており、付加体浅部の力学的・水理学的な挙動が明らかとなってきた。中間評価においても期待以上の実績を挙げたと高い評価を受けた。
南海トラフ付加体深部掘削試料、および巨大分岐断層・プレート境界断層試料の変形・透水実験は、IODP掘削計画の遅れと変更により、当初計画通りの実施が困難となった。そこで、平成24年度以後は、既存の付加体浅部掘削試料を使用して、想定される付加体深部の様々な温度・圧力・間隙水圧条件において変形・透水実験を行い、その結果に基づいて付加体深部の力学的・水理学的性質を推定する予定である。また、新たに東北地方太平洋沖地震の震源断層浅部掘削が計画されたため、その掘削試料の変形・透水実験も実施する予定である。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (27件) (うち査読あり 27件) 学会発表 (100件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Journal of Structural Geology
巻: 38 ページ: 90-101
10.1016/j.jsg.2011.08.013
巻: 38 ページ: 117-138
10.1016/j.jsg.2012.01.002
巻: 38 ページ: 177-182
10.1016/j.jsg.2011.09.007
巻: 38 ページ: 234-242
10.1016/j.jsg.2011.08.012
Journal of Geophysical Research
巻: 117 ページ: B05405, 1-16
10.1029/2011JB008956
Geophysical Research Letters
巻: 39 ページ: L01307-1-L01307-5
10.1029/2011GL050493
巻: 34(印刷中)
10.1016/j.jsg.2011.10.011
10.1016/j.isg.2011.12.001
10.1016/j.isg.2011.12.007
10.1016/j.jsg.2011.12.014
Geology
巻: 39 ページ: 599-602
10.1130/G31842.1
巻: 33 ページ: 1122-1134
10.1016/j.jsg.2011.01.007
Earthquake Science
巻: 24 ページ: 249-265
10.1007/s11589-011-0789-z
巻: 24 ページ: 267-281
10.1007/s11589-011-0790-6
巻: 116 ページ: B07306-1-B07306-12
10.1029/2010JB007945
Earth and Planetary Science Letters
巻: 307 ページ: 161-172
10.1016/j.epsl.2011.04.042
巻: 308 ページ: 284-297
10.10.16//j.epsl.2011.04.023
巻: 38 ページ: L17303-1-L17303-5
10.1029/2011GL048850
巻: 38 ページ: L18303-1-L18303-5
10.1029/2011GL048552
巻: 116 ページ: B09208-1-B09208-17
10.1029/2011JB008338
巻: 38 ページ: L19301-1-L19301-6
10.1029/2011GL049314
巻: 310 ページ: 225-232
10.1016/j-epsl.2011.09.001
巻: 116 ページ: B10405-1-B10405-25
10.1029/2010JB008062
巻: 116 ページ: F04007-1-F04007-16
10.1029/2010JF001921
巻: 39 ページ: 995-998
10.1130/G32038.1
巻: 38 ページ: L21305-1-L21305-6
10.1029/2011GL049308
Geological Society of London Special Publications
巻: 359 ページ: 267-285
10.1144/SP359.15
http://www-solid.eps.s.u-tokyo.ac.jp/nantro~/index.html