計画研究
1)南海トラフ付加体浅部から採取された、砂岩、凝灰岩およびシルト質泥岩3試料について低速(0.1~10 μm/s)摩擦実験を行い、 昨年度行ったシルト質および粘土質泥岩2試料の実験結果と総合した結果、付加体浅部堆積岩類の摩擦特性が粘土鉱物含有量によ って系統的に変化することが明らかとなった。すなわち、粘土鉱物含有量の増加に伴い摩擦強度は低下し、全試料とも変位速度の 増加に伴い摩擦強度が増加する速度強化の挙動を示すが、粘土鉱物含有量の増加に伴って摩擦に対する流動の影響が大きくなる。2)日本海溝プレート境界断層浅部、およびその上盤・下盤の泥質堆積物試料の摩擦実験・透水実験を行った結果、低速(≦250 μm /s)では上盤・下盤泥質堆積物試料の摩擦係数が0.3~0.5程度であるのに対し、プレート境界断層試料の摩擦係数は約0.15程度と 著しく小さいことが明らかとなった。その原因については今後詳細に検討する予定である。また、原位置深度相当の有効圧に換算 した浸透率は10-18 m2のオーダーで、プレート境界断層の上盤と下盤で系統的な差は認められなかった。3)コスタリカ沖の掘削により採取された、沈み込む海洋プレート表層約100 mの泥質堆積物試料について、中速(0.03~3 mm/s)摩擦 実験を行った結果、上位の粘土質試料と下位の珪質または石灰質の軟泥試料には摩擦特性に著しい相違があることが明らかとなっ た。定常摩擦係数は、粘土質試料が0.2以下と非常に小さいのに対し、軟泥試料は0.6~0.8と大きい。また摩擦係数の変位速度依存 性は、粘土質試料が常に正の依存性を示すのに対して、軟泥試料は変位速度0.3 mm/s以下では明瞭な負の依存性を示す。粘土鉱物 含有量がこのような顕著な摩擦特性の相違を生じた原因の1つと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
これまで研究は順調に推移しており、これまでに南海トラフ付加体浅部の力学的・水理学的な挙動に加えて、日本海溝プレート境界断層浅部やコスタリカ沖の沈み込み帯の力学的・水理学的な挙動も明らかとなりつつある。
南海トラフ付加体の力学的・水理学的挙動に関しては、今後既存の付加体浅部掘削試料を使用して、想定される付加体深部の様々な温度・圧力・間隙水圧条件において変形・透水実験を行い、その結果に基づいて付加体深部の力学的・水理学的性質を推定する予定である。また、日本海溝プレート境界断層浅部、およびコスタリカ沖の沈み込み帯の力学的・水理学的挙動についても、掘削試料の変形・透水実験に基づいて明らかにする予定である。さらに、得られた実験結果を領域内の別の計画研究で実施される巨大地震の準備・発生過程の数値モデリングに必要な情報として提供する予定である。
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すべて 雑誌論文 (30件) (うち査読あり 24件) 学会発表 (74件) (うち招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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