研究領域 | 超深度掘削が拓く海溝型巨大地震の新しい描像 |
研究課題/領域番号 |
21107006
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
木下 正高 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 所長 (50225009)
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研究分担者 |
伊藤 久男 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球深部探査センター, 調査役 (10356470)
林 為人 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, グループリーダー (80371714)
伊藤 高敏 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (00184664)
加納 靖之 京都大学, 防災研究所, 助教 (30447940)
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キーワード | 地震発生帯 / 応力場 / 水圧破砕実験 / コンプライアンス / 東北地方太平洋沖地震 / 断層掘削 / BSR / CTスキャン |
研究概要 |
(1)応力・歪解析・地震学総合解析 東北地方太平洋沖地震の震源域付近で1999年に実施されたODP掘削検層データを再解析したところ、地震の空白域では圧縮方位がプレート収束方位とほぼ一致した。同地震の発生前にはプレート運動による水平圧縮が卓越していたことを示唆する(Lin et al., 2011GRL)。また、地下の主応力場決定に用いられる水圧破砕法を補うため、コア試料回収後の弾性変形を利用して現場での差応力を推定する方法の開発を継続し、実験の結果とほぼ一致した。この手法が有効であることが示唆された。一方、簡便で信頼性の高い現場応力計測装置の開発も継続、基本設計が完了、核となる技術の特許を出願した。 (2)熱・水理学総合解析 3D地震探査データと掘削データから、付加体前弧のImbricate thrust zoneでの熱流量分布を明らかにした。その基礎となったBSR深度が、断層をはさんで上盤で有意に浅くなっていること、断層を挟んで不連続になっていることから、断層がごく最近まで活動していることなどを提案した(Kinoshita et al., 2011)。 断層や岩石中の透水構造を決めるクラック・亀裂などは、現場条件(封圧下)では常圧状態とは全く異なると予想される。現在では、回収されたコア試料を船上(常圧)でCTイメージを取得しているが、試料を耐圧容器に入れて加圧状態でCT測定を目標として、CTを透過する耐圧容器(コアホルダー)の開発を行い、特許を出願した。高圧容器として、当初は加工が比較的容易なPEEK材を用いたが耐圧性能に問題があったためCFRP素材に変更し、30MPaまでの計測に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応力・歪解析・地震学総合解析: 3.11東北地震の理解に向け、地震前の応力を既存データ再解析から明らかにしたことは、応力場推定に光を当てるものであり、当初の計画以上の達成であった。現場(孔内)での主応力場推定のために、検層・水圧破砕実験・コア計測を統合する方法が有効であることが判明した一方、現場計測装置の開発も一定の成果を得た。 熱・水理学総合解析:封圧下でのCT計測(一部繰越で実施)は、圧力容器の本体部や扶持する金属の材質選定、それに基づく設計・製作、テストの各過程が試行錯誤を伴う開発であり、予定よりも時間を要したが、一定の成果を得たと判断する。一方、地震探査・掘削データの精査によりこれまで注目されなかった深田前縁部でのBSR深度から断層活動時期を推定したことは、貴重なデータの活用と新たな知見の蓄積という意味で重要な進展と考える。 以上から、23年度(一部24年度繰越)の達成度はおおむね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
①C0002孔においてライザー掘削を開始し、巨大分岐断層(5000m)まで到達する。LWD(掘削時同時検層)から水平最大主応力場の向きや地震波速度・各種物性値・間隙圧異常を、深さ方向の関数として得る。また水圧破砕実験を行い、水平主応力の大きさや地層透水率を現場計測する。A01班および米国の研究者に協力し、3600mまでの孔を利用してVSP観測を行う。 ②現場応力測定装置の開発を継続し、陸上の掘削孔(断層帯を含む)にて試験観測を実施する。また、断層特性時間変動推定に向けて、孔内設置型能動震源による制御震源探査の概念設計を行う。 ③上記結果を統合して、スケール依存性等を考慮した応力場・水理特性・力学特性などを、孔の周辺において推定する。 ④東北地震震源域掘削に参加し、LWDおよびコア試料による応力・物性データの獲得を行う。また孔内温度モニタリングを開始し、地震時の摩擦発熱量の推定に着手する。 ⑤これまでに開発したCFRPで製作する円筒状の筒と金属製の蓋の接合方法の改良により、更に高圧での動作が可能であることが検討により判明したため、圧力容器の改良を行い、データ解析による研究の意義を明らかにして行く。
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