研究領域 | 超深度掘削が拓く海溝型巨大地震の新しい描像 |
研究課題/領域番号 |
21107007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井出 哲 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90292713)
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研究分担者 |
堀 高峰 独立行政法人海洋研究開発機構, 地震津波防災研究プロジ ェクトデータ解析グループ, サブリーダー (00359176)
吉岡 祥一 神戸大学, 都市安全研究セン ター, 教授 (20222391)
芝崎 文一郎 独立行政法人建築研究所, 国 際地震工学センター, 上席研究員 (20344012)
伊藤 喜宏 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30435581)
亀 伸樹 東京大学, 地震研究所, 准教授 (90304724)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 南海沈み込み帯 / 地震サイクル / 深部微動 / ゆっくり地震 / 動的破壊過程 / 温度構造 / 応力場 / 東北地方太平洋沖地震 |
研究実績の概要 |
海溝型巨大地震の準備・発生過程のうち、研究実施計画に挙げた3項目、(A) 沈み込み帯浅部の付加体形成と低速変形、(B) 地震の動的破壊伝播とプレート境界面形状、(C) 地震準備過程を含む地震サイクル、それぞれついて必要な計算コードの作成や計算環境の整備、試験的計算などを行った。具体的な成果は以下の通り。 (A) 付加体内のデコルマの活動変化が沈み込みに伴う応力変化によって起きることを明らかにした。従来のスロー地震を説明する脆性塑性不均質パッチモデルを、紀伊半島地域での深部低周波微動の不均質な発生パターンについてのデータを用いて精緻化した。また、微動の時間空間的な統計的分析法を開発した。また大規模な移動パターンにもとづいて、プレート境界の速度依存性と粘性係数を推定した。 (B) 高速で著しい摩擦係数の弱化を示す速度・状態依存則を用いて東北地方太平洋沖地震の余効すべりの特徴を再現した。新しい定式化に基づき、モードIII型非平面断層に適用可能な動的破壊解析の計算コードを開発した。巨視的亀裂滑りに伴う二次破壊として、周辺岩石の破砕・分岐の可能性と空間分布について考察した。紀伊半島沖のフィリピン海プレートの構造及び詳細な震源分布を明らかにした。 (C) 地震すべり時の摩擦発熱による間隙水圧増大の効果を考慮した超巨大地震発生サイクルモデルを構築した。2011年東北地方太平洋沖地震前の2008年と2011年にスロースリップが巨大地震震源域内で発生していたことを示した。これは海溝軸近傍で滑りが本震発生前に開始していた可能性を示す。岩石摩擦実験における実現している断層強度の透過弾性波モニタリング方法を、天然の断層において適用した場合の周波数レンジと振幅変化ついて理論モデルを用いて定量的に検討した。任意のスラブ形状および厚さ変化を考慮した3次元箱型熱対流スラブ沈み込みモデルを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本計画はもともと南海沈み込み帯で発生する巨大地震(およびその前後のプロセス)を主な対象としてモデル研究を行う計画であったが、2011年の東北地方太平洋沖地震の発生により、東北の沈み込み帯も研究対象に加えることとなった。もともと想定していた南海での成果に加えて、東北地方太平洋沖地震の貴重な観測結果を用いた成果が加わった。両地域は沈み込み帯という点では共通しているものの、沈み込むプレートの年代や速度、周辺の地質学的特徴などに大きな違いがみられ、比較によって、より幅広い研究が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な研究計画の枠組み、(A) 沈み込み帯浅部の付加体形成と低速変形、(B) 地震の動的破壊伝播とプレート境界面形状、(C) 地震準備過程を含む地震サイクル、に変更はない。それぞれの線に沿った研究を進める。 東北地方太平洋沖地震の発生によって地震学の既存の枠組みが大きく変化している。南海地域を対象とした本研究計画でもその変化は無関係ではない。むしろ本新学術領域研究が、領域全体として目指す「新たな描像」づくりには適切な変化である。最終年度に当たり、計画研究として、ある程度まとまった「新しい描像」を得るために研究集会等を開催する。また他の計画研究の成果を取り入れたモデル化を進める。
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