研究領域 | 配位プログラミング ― 分子超構造体の科学と化学素子の創製 |
研究課題/領域番号 |
21108002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西原 寛 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70156090)
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研究分担者 |
山野井 慶徳 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20342636)
坂本 良太 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80453843)
中里 和郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90377804)
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研究期間 (年度) |
2009-07-23 – 2014-03-31
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キーワード | 配位プログラミング / 金属錯体 / 刺激応答性分子 / 界面修飾 / 分子デバイス / 分子ワイヤ / ナノシート |
研究概要 |
(1)金属錯体ナノシートの創製と機能:ニッケルイオンとベンゼンヘキサチオールを原料とし、液―液および気―液界面を用いた界面合成法を駆使することで、π共役ニッケラジチオレンナノシートの合成に成功した。このナノシートは既報の二次元的な金属―有機集積体とは異なり、シート全体がπ共役しているという特長を有し、電子伝導性を示す。さらにニッケルジチオレン部位を化学的に還元することで、ナノシートの電子伝導性を制御できることを見出した。電子伝導性を示す金属錯体ナノシートは例がなく、革新的な材料を創製できたといえる。 (2)基板表面での分子ネットワークの構築と機能:(i) 独自開発した手法を用いて、Si(111)基板上にアリール基をアンカー部位とする分子ワイヤを構築し、分子ワイヤの伸長過程をAFMにより観察することに成功した。(ii) 分子ワイヤの末端レドックス部位がビス(テルピリジン)鉄錯体ワイヤの電子移動特性に与える影響を明らかにした。(iii) アンカー部位に三脚構造を導入し、金基板に直立する分子ワイヤを構築した。このワイヤが優れたワイヤ内電子移動特性を示すことを明らかにした。(iv) ラジカル重合法を用いて炭素電極上にビス(テルピリジン)鉄錯体ポリマーを形成し、これがエネルギー貯蔵材料に応用できることを見出した。 (3)新しい刺激応答性分子の創製:強発光を示す非対称ジピリン錯体、高効率光異性化能を有するジエチニルエテン、金属間電子相互作用を示す多核クラスタージチオレン錯体、外部刺激により制御される分子ローター銅錯体、パラジウムナノ粒子ネットワークなどの合成に成功した。 (4)微小ゲートCMOS集積回路を用いる超高感度素子の開発:PSIからなる光電変換素子に組み込む分子ワイヤを改良することで、素子の高機能化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)金属錯体ナノシートの創製と機能 に関しては、我々が独自に研究を進めてきた刺激応答分子であるニッケラジチオレンクラスター錯体を二次元的に精密配列することで、電子伝導性を示す二次元錯体ナノシート、π共役ニッケラジチオレンナノシートの合成を構築することができた。本研究成果をまとめた論文をアメリカ化学会誌に報告したところ(J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 2462-2465)、Utah大学の理論物理学者Feng Liu博士が、このニッケラジチオレンナノシートが初の二次元有機トポロジカル絶縁体となる可能性を指摘した(Nano Lett., 2013, 13, 2842-2845)。トポロジカル絶縁体は、次世代のスピントロニクスデバイスの有力な構成要素として注目を集めている新奇材料である。この点から革新的な二次元分子材料を創製することができたといえる。一方、(2)基板表面での分子ネットワークの構築と機能に関しては、相当の成果が上がっており、分子ワイヤの電子移動特性の定量的な予測ができる段階まで達している。その他、(3)新しい刺激応答性分子の創製 においても、光、熱、電子など様々な刺激応答性分子群を創製することができた。これらの研究成果について、相当数の学会発表、論文発表を行った。 以上から、本研究課題は当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は平成25年度末をもって終了した。
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