研究概要 |
生体膜構造に組み込まれている機能から学んだ人工の超分子デバイスを「配位プログラミング」を用いて作ることが本研究の最終的な目標である。そこで、レドックス活性あるいは光機能性の金属錯体を分子ユニットとして配位プログラミングにより逐次積層法させた集合体を表面に構築し、それを光イメージセンサや積層膜の蓄電能を利用した光メモリデバイスなどに応用した新たな分子デバイスの創製を目指している。本年度は錯体に4個のホスホン酸基をもたせた表面錯体は、固体表面で垂直に分子配向する。この錯体修飾電極にRu(II)のままの状態で500nmの可視光を照射すると、アノード光過渡電流が観測されるが、Ru(II)からRu(III)、そしてRu(II)にもどるOV→+1.0V→0Vの電位パルスを印加した後に同様に500nmで光照射するとカソード光過渡電流が観測されることがわかった。修飾電極に印加する電位がRu(II)からRu(III)への酸化を起こすかどうかにより、光電流の方向が異なることが明らかになった。さらに、カソード光電流は錯体の分子長に依存し、分子長が大きいと増加することから、印加する電位により分子が酸化されたかどうかをメモリする新しいタイプのデバイスになることが明らかになった。さらに強い金属間相互作用をもつ二核錯体系として2,3,5,6-テトラ(ピリジル)ピラジンをもつ新規二核錯体を合成し、X線構造解析から架橋配位子は大きな歪みをもつことを明らかにした。二核錯体を表面固定化し、その混合原子価状態が積層化について今後検討する予定である。また、固体表面へのナノ物質の位置を決めた集積化のためにレーザー光をガイドとした金表面へのDNA配線およびナノ微粒子のナノリング形成に成功した。この手法は、新たなナノ物質の位置と数をプログラミングして固定化できる可能性をもっている。
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