研究概要 |
配位プログラミングによりポテンシャル傾斜を持たせた分子ヘテロ積層デバイスの作製により,伝導性の制御を目指した。4個のボスホン酸基をアンカー配位子XPとして多点で酸化物表面に吸着できる分子として、4個のホスホン酸基をアンカー配位子XPとしてもつレドックス活性な2核錯体[M_2(XP)_2(BL)](BL=tppz,tpb;それぞれRu-N,Ru-Cと略記する)を合成した。Ru-N錯体は+0.84Vと+1,05V、Ru-C錯体は-0.37Vと+0.09Vに2段の1電子酸化波が観測され、混合原子価状態が安定に存在する。これらの錯体を、ITO電極上に逐次積層法によりナノメートルサイズで縦方向に配向の揃った逐次積層膜を構築した。[M_2(XP)_2(BL)]錯体とZrイオンとの逐次積層化により基板上で膜は縦方向に規則的配列を作製できる。この積層構造内に電位勾配を持たせたRu-N錯体とRu-C錯体を組み合わせたヘテロ分子膜のサイクリックボルタモグラム(CV)において、Ru脳錯体をn層(n=1,3)、Ru-C錯体を1層の順に積層したCV測定から,n=1の時にはRu-N錯体およびRu-C錯体の両錯体の可逆な酸化還元波が2個の組として観測される。しかし、n=2のときには、Ru-C錯体は電極との直接の電子移動ができず、内側のRu-N錯体を電子メディエーターとする酸化電流のみが大きく正側にシフトして前置波として現れる。この前置波は還元方向に走査後にしか現れないことから分子ダイオードとして働くことがわかった。さらに,ITO電極||分子積層膜||PEDOT電極という2端子構成での固体膜での電流-電位(1-V)プロットにおいてヘテロ積層膜では積層順番に依存した整流性が現れることが明らかになり,今後の分子デバイス設計への配位プログラミングの優位性を示せた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表面での多脚アンカー基の自己組織化膜の作製法が数年前に確立したので,これを用いたデバイス設計ができるようになり,分子積層膜での伝導性,メモリデバイス機能,ポテンシャル傾斜を持ちせた整流機能などの設計ができるようになってきた。
|