研究領域 | 配位プログラミング ― 分子超構造体の科学と化学素子の創製 |
研究課題/領域番号 |
21108004
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
佐々木 園 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (40304745)
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研究分担者 |
増永 啓康 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門・動的構造チーム, 研究員 (50398468)
小川 紘樹 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門・ナノ先端計測支援チーム, 研究員 (00535180)
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キーワード | 放射光GISAXS/GIWAXS測定 / 有機金属錯体 / 高分子薄膜 / X線マイクロビーム / 時間分解測定 / 動的構造解析 / 薄膜結晶化挙動 / 電気化学計測 |
研究概要 |
(1)GISWAXS時間分解測定法の確立:薄膜・表面における階層構造のその場計測法として、放射光を利用した微小角入射小角X線散乱(GISAXS)と微小角入射広角X線散乱(GIWAXS)の同時時間分解計測法を確立した(以下GISAXSとGIWAXSの同時測定をGISWAXS測定と呼ぶ)。GISWAXS法は、ダイレクトX線を試料表面すれすれに入射して、試料表面近傍からの小角・広角散乱を異なる2つの2次元検出器でそれぞれ計測する手法で、ソフトマターの薄膜研究用計測ツールとして世界の放射光施設に先駆けて我々がSPring-8((独)理化学研究所、兵庫県作用郡)のBL40B2(共用小角X線散乱ビームライン(SAXS-BL)、偏光電磁石光源)を利用して確立した実験法である。膜厚が数十nm~数百μmの薄膜や固体表面のメソ構造とナノ構造を、GISAXSおよびGIWAXSパターン解析に基づきそれぞれ明らかにすることが出来る。本研究では、GISWAXS計測システムを高度化して、高分子薄膜の製膜過程における結晶化キネティクス研究に応用した。その結果、高分子薄膜の溶融状態からの等温結晶化において、膜厚が結晶化誘導期に影響を与えることを実験的に初めて明らかにすることが出来た。 (2)電場刺激下の有機金属錯体薄膜に対するGISAXSその場測定法の構築:有機金属錯体薄膜の電気化学測定とX線散乱測定を同時に行うためのGISAXS計測システムをSPring-8のBL45XU(理研専用SAXS-BL、アンジュレータ光源)を利用して構築した。ITO基板上に製膜したルテニウム二核錯体の5層積層膜(膜厚:十数nm、A01班 芳賀教授(中央大理工)・金井塚助教(山形大理)との共同研究)を試料に用いて、電解溶液中のRu^<2+>→Ru^<3+>の酸化電位下にある薄膜構造をGISAXSその場測定法で評価することに成功した。 (3)マイクロビームGISAXS/GIWAXS計測システムの構築:表面(界面)および膜厚方向の局所構造を評価するために、X線マイクロビームを利用したGISAXS/GIWAXS計測システムを構築した。本研究でSPring-8のBL45XU(理研専用SAXS-BL、アンジュレータ光源)を利用して構築したマイクロビーム光学系は、有機金属錯体・高分子薄膜の局所構造評価に十分な明るさと空間分解能を有することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射光を利用して新規な薄膜/表面構造評価システムを立ち上げることが本研究の目的であるが、この点においては当初の研究計画にそって進んでいる。また、領域内共同研究の推進も積極的に行っており、本研究はおおむね順調に進展してはいるが、研究成果を論文などにまとめて公表するにはまだ至っていないため今後2年間で実施する。
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今後の研究の推進方策 |
放射光施設での実験が主である本研究を推進するためには、研究代表者と放射光施設に勤務している共同研究者が同じ目的意識を持って質の高い連携を行う必要がある。本研究がスタートした頃は、研究代表者は放射光施設に勤務しており同じチームに所属していた共同研究者との作業分担や情報交換に問題はなかったが、大学に移籍後2年が経過して研究代表者のみならず共同研究者も研究環境が変化したため、昨年末に本研究の進め方について再検討した。その結果、連絡を密にとりながら当初立案した研究計画を推進することとした。今後は、論文投稿を最優先課題として、本研究を実施する。
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