研究概要 |
分子の電子状態を制御し,それが組織的に集合した系は,個々の分子特性の相乗効果による特異な物性・機能発現が期待される.分子が本質的にもつスピンと電荷の相互作用や量子効果を,より鮮明に,より機能化した形態で発現させ,特異な構造をもつ分子や機能性分子をナノスケールで集積化・階層化したクラスターシステムを構築し,その特異な構造と電子状態の揺らぎに基づく新奇物性探索を目指し次の研究を行った.1)環状金属錯体の特異な新奇磁性探索:基底スピン状態S=1/2をもつバナジルイオンが7個環状に配列した分子を合成し,その極低温(0.4K)での磁化測定の結果,この環状7核錯体がS=1/2を基底状態にもち,正七角形からの歪みによるスピンギャップが0.5mKであることを明らかにした.2)多重双安定・三安定分子の構築目指し,シアン化物イオン架橋混合原子価環状四核[Fe2Co2]錯体を合成し,その磁性,メスバウアースペクトル,吸収スペクトルおよび詳細なX線構造解析により,本錯体が多段階で電子移動する多重安定性分子であることを明らかにした.さらに,極低温(5K)における光照射実験(530nm)により,低スピン状態(低温相)から高スピン状態(高温相)に光転移することを見出した.
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