研究領域 | 配位プログラミング ― 分子超構造体の科学と化学素子の創製 |
研究課題/領域番号 |
21108006
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大塩 寛紀 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60176865)
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研究分担者 |
中野 元裕 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00212093)
二瓶 雅之 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00359572)
菅原 正 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特任研究員 (50124219)
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キーワード | 多重双安定性 / 混合原子価錯体 / シアン架橋錯体 / 単一次元鎖磁石 / 磁気的性質 / 誘電性 / 異種金属錯体 / 光スイッチング |
研究概要 |
分子の電子状態を制御し、それが組織的に集合した系は、個々の分子特性の相乗効果による特異な物性・機能発現が期待される。分子が本質的に持つスピンと電荷の相互作用や量子効果を、より鮮明に、より機能化した形態で発現させ、特異な構造をもつ分子や機能性分子をナノスケールで集積化・階層化したクラスターシステムを構築し、その特異な構造と電子状態の揺らぎに基づく新規物性探索を目指す。次の3点に的を絞って研究を進めた。(1)環状金属錯体の特異な新規磁性探索。(2)多重双安定性・三安定分子の構築と光物性変換。(3)マルチフェロイック分子システムの構築 平成23年度は、前年度に引き続き(2)について検討を行った。新規シアン化物イオン架橋混合原子価ヘテロ金属錯体において、多重安定性の構築と温度・光・電場などの外場による電子状態制御の可能性について調べた。様々な補助配位子をもちいてコバルト-鉄Square型4核錯体を合成し、温度・光による電荷移動を伴うスピン転移現象を観測した。配位子の化学的修飾を行い電気化学的性質などを検討することで、電荷移動に伴うスピン転移現象を分子レベルで設計可能であることを見出した。 また、(3)に関連して、強誘電・強磁性を示す分子性化合物を開発し、マルチフェロイック分子システムとしての物性検討を行った。キラルな4座配位子をもちい、コバルト-鉄一次元ジグザグ鎖構造をもつ集積型錯体を新規に合成した。温度変化に伴う磁化率の急激な変化と色調の変化を観測し、コバルトイオン-鉄イオン間の電荷移動に伴うスピン転移現象が発現していることが明らかとなった。外場応答性に関して、現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特異な分子構造に基づく電子機能の発現を目的として、異種金属イオン集積型錯体を中心として、物質探索を行った結果、電荷移動を伴うスピン転移現象を示すコバルト-鉄Square型錯体やコバルト-鉄一次元鎖錯体を得ることに成功した。これらの錯体において、温度・光などの外場応答性を詳細に調べることができ、分子構造をもとにした物性発現が達成できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現段階で得られているディスクリートなコバルト-鉄Square型錯体や一次元鎖錯体の物性測定に関して、磁気的性質だけでなく、誘電率・電気伝導度測定なども試みており、錯体の持つ電子機能に関して検討を行っているところである。今後、光誘起準安定状態の構造解析や物性変化を中心として研究を進め、多重双安定性をしめす分子システムの設計指針・分子性材料としての可能性を追求する予定である。
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