研究概要 |
本研究ではこれまでにレドックス駆動型多重安定系を構築すべく、柔軟な物理構造と柔軟な電子構造を併せ持つ分子集合体を創成してきた。最終年度は、カチオンー中性ーアニオン性メソゲンのレドックス活性に基づいた動的分子集合体の構築を完成させことを目的とした。具体的には、イオン性の[M(レドックス活性配位子)2]+/-型コアとイオン性長鎖を組み合わせた新規系の創出を展開した。これらは従来の[M(レドックス活性配位子)(Cnbpy)]型メソゲンに比べそのレドックス能の多様化(電子数、可逆性、サイト)をチューニングでき、従来系とは一線を画す分子集合系や電気化学応答を獲得できると期待される。Mには、Ni, Au, Pt, Pd等を用い、レドックス活性配位子にはカテコールやベンゼンジチオラート、フェニレンジアミン誘導体やチオフェノラートなどの混合配位原子を含む非対称配位子も併せて用いた。 その結果、金を中心に持つビスベンゼンジチオラート錯体とテトラアルキルアンモニウムカチオンを組み合わせたイオン性化合物[N(CnH2n+1)4][Au(Bdt)2] (n = 1, 4, 10, 16)の合成に成功し、カチオンのアルキル部位が伸長するに従い、液体相への転移温度が降下し、相転移が誘発されるという傾向があるころを明らかにした。更にC16Auがスメクチック液晶相を発現することを明らかにした。これらの化合物は溶液中にて、アルキル鎖長に依存せず酸化及び還元側に一対の可逆なレドックス応答を示すことを明らかにした。以上の結果により従来の非対称型レドックス活性コアに加え、対称型レドックス活性コアを用いたレドックス活性集合体の創成に成功したと言える。興味深いことに類似のPt, Ni錯体は混合原子価状態を示すと共に、Au錯体とは異なる集積構造を与え、電子状態とマクロ相が強く相関した系の構築に成功したと言える。
|