研究概要 |
分子レベルでの素子機能の集積化には、精密に空間配置を制御しながら多種・多数の分子を思い通りに組織化し、分子間コミュニケーションを自在に生み出すことが必要である。本研究では、ペプチドの逐次合成法や超分子的な分子会合法を用いて、異核種金属錯体分子組織を構築し、金属錯体間の電子的相互作用をもとにした、機能分子素子構築を行った。我々は、機能性分子ユニットとして、安定な酸化還元性、化学修飾による酸化還元電位の多様性の観点からポルフィリンやフタロシアニンを選び、その一次元組織化による分子素子構築を考えた。 まずペプチド型金属錯体分子組織について、アミノ酸ユニットを1分子内に2つのアミノ酸を結合したポルフィリンを用い、2つの人工ペプチド鎖をポルフィリンのスタッキングアレイが架橋した構造をもつラダー型の分子組織を構築した。ポルフィリン環同士は互いに強く電子的にカップリングしていることが、電気化学測定により明らかになった。この合成法は、様々な金属ポルフィリンを配列化することに用いることができ、実際にCu2+, Ni2+, Pd2+, Zn2+といった金属イオンがプログラム通りに配列化可能であることを示した。 次にロタキサン型金属錯体分子組織について、ジアルキルアンモニウムとクラウンエーテルとの間のロタキサン形成反応を利用して、4本のジアルキルアンモニウム側鎖をもつポルフィリン上に4つのクラウンエーテルユニットをもつフタロシアニンを集積化させることで、4重ロタキサン型ポルフィリン-フタロシアニンヘテロ二量体が収率よく合成できることを見出した。外部刺激に応答するスピン素子などを構築した。 以上のように、金属錯体をプログラム配列化することで、異種金属間の相互作用制御をもとに、機能性分子組織を構築した。
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