研究領域 | 配位プログラミング ― 分子超構造体の科学と化学素子の創製 |
研究課題/領域番号 |
21108013
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小松 晃之 中央大学, 理工学部, 教授 (30298187)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 蛋白質 / ナノチューブ / ヘム / アルブミン / ペルオキシダーゼ / 酸化反応 / 金ナノ粒子 / 交互積層 |
研究実績の概要 |
生命現象の根幹を支え多彩な高次機能をつかさどる蛋白質は、進化の過程を経て最適化されてきた究極の超構造体である。その蛋白質を機能材料創製の基本ユニットとして用いる戦略は、合理的な分子設計の一つであり、バイオナノテクノロジーのフロンティアといえる。本研究は、蛋白質、人工ヘム蛋白質、金属ナノ粒子を所望の序列で階層的に組織化する方法により、構造明確なナノチューブやナノクラスターを構築し、その分子配置・配列を利用した新しい機能の創出、さらにはそれらを用いた機能分子システムの創製を目指している。平成24年度は以下の成果を得ることができた。 1)人工ヘム蛋白質の合成 管壁成分となるアルブミンに遺伝子組換え技術を用いて酵素活性を付与することに成功した。具体的には、アルブミンのヘムポケット内にあるイソロイシン-142とロイシン-182をヒスチジンに変換することで、人工ペルオキシダーゼを構築。種々のヘムを結合させて得た組換えアルブミン-ヘム錯体が、基質(グアイアコールなど)の酸化反応を触媒することを実証した。酵素パラメーター(Km、kcat)とヘムポケット構造の相関を明示した。 2)ナノチューブの基板への固定とナノチューブアレイの構築 アルブミン、フェリチン、金ナノ粒子などからなるナノチューブをポリカーボネイト膜に結合したままガラス基板上に密着させ、その後テンプレートを除去する方法により、基板表面に対して垂直に配向したナノチューブアレイを構築した。得られた構造体を焼成し、金ナノ粒子や金属酸化物からなるナノチューブアレイの合成も試みたが、熱処理により形状が変形してしまうことがわかった。今後さらなる条件の最適化が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、研究計画として掲げた内容については、上記のように順調に成果を集積している。ナノチューブの原料となり得る機能性アルブミン変異体の開発では、ペルオキシダーゼ活性に続き、スーパーオキシドディスムターゼやカタラーゼ活性を付与することにも見通しが立っている。さらに構造明確な蛋白質クラスターを合成することも可能となってきており、その意味でも、予想以上の成果があったと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
蛋白質ナノチューブの構造と機能の相関については、最終年度も留まることなくさらなる機能拡張を展開する。金ナノ粒子含有ナノチューブの触媒作用、アルブミンマイクロチューブの微生物捕捉、リパーゼナノチューブによる酵素重合などを具体化したい。さらに、ヘモグロビンの分子表面に複数個のアルブミンを結合した(ヘモグロビン-アルブミン)クラスターの構造と酸素結合能についても明らかにしていく。
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