研究分担者 |
小菅 正裕 弘前大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (90142835)
山本 希 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (30400229)
高橋 努 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (90435842)
加藤 愛太郎 東京大学, 地震研究所, 助教 (20359201)
石川 正弘 横浜国立大学, 環境情報研究院, 准教授 (70232270)
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研究概要 |
鳴子周辺に設置した臨時観測網のデータを用いて,予備的なトモグラフィを実施した.得られた構造には火山の下の低速度域が明瞭に示されており,今後データが蓄積されれば,AO1-2班によって得られた比抵抗分布と比較することによって地殻流体の分布や存在形態が明らかになると期待される. 東北地方で発生する稍深発地震の波形を用いて,地震波減衰構造を推定した.前弧側のマントルウエッジは減衰が小さく,背弧側では減衰が非常に大きく,さらに火山フロント下に沿った最上部マントルには,高減衰域が連続的に分布していることも明らかになった. 東北日本における弾性波速度やランダムな速度ゆらぎ,内部減衰を用い,独立成分分析による媒質の特徴抽出を行った.本州弧とクリル弧の衝突帯や第四紀火山下は共通して低速度異常・高減衰という特徴を示すが,統計的に独立な成分で比較するとそれぞれ異なる特徴を持つことが判った.これらの低速度や高減衰は非弾性や流体など様々な起源が考えられるが,その違いを客観的に抽出できる可能性がある. 2008年岩手・宮城内陸地震の余震記録から地震の分類を行った.地殻流体が関わっていると考えられる低周波の地震は高周波の地震と空間的に明瞭に棲み分けていることが判明した. 2011年東北地方太平洋沖地震発生前後の地震のメカニズム解の解析から,プレート境界の強度は普通の摩擦強度の5%くらいしかなく,また内陸でも僅かな応力変化で地震活動が活発化したことが明らかになった.これらの原因としては極めて高い間隙水圧の存在が最も考えやすい. 詳細な地震波速度構造を推定した結果,2011年4月7日に発生したのスラブ内地震(M7.1)の震源域周辺に顕著な低速度異常がイメージングされた.海溝海側斜面で生じた正断層に沿って蛇紋岩化したマントルが脱水反応を起こし,断層面の強度を低下させて地震が起こりやすくなっていたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2011年東北地方太平洋沖地震の発生により,プレート境界の間隙水圧が高いことの検証が進んだ.また,この地震に誘発された地震活動の解析から,内陸の地震発生域も強度が低く,間隙水圧が高いことが示唆された.これに加えて,鳴子周辺のトモグラフィの実施や東北地方の減衰構造の推定については当初予定通り研究が進んだ.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標はGeofluid Mapの構築にあり,そのために様々な情報を抽出してきた.2011年東北地方太平洋沖地震の発生により,地殻の応力が大きく変化したが,これは解析領域の境界条件が大きく変化したことを意味している.このような異なった境界条件の場での地震活動の比較を行うことにより,強度が小さい場所を推定し,その場所の間隙水圧が高いことが証明できれば,地震活動からも流体の分布の推定に有効な情報が得られることになる.このような観点から解析を進めることにより,高密度の観測網が存在しない領域における流体の分布の推定の確度が上げられると期待される.
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