研究領域 | 地殻流体: その実態と沈み込み変動への役割 |
研究課題/領域番号 |
21109002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松澤 暢 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20190449)
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研究分担者 |
岡田 知己 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30281968)
中島 淳一 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30361067)
小菅 正裕 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90142835)
山本 希 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30400229)
高橋 努 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (90435842)
加藤 愛太郎 東京大学, 地震研究所, 准教授 (20359201)
石川 正弘 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (70232270)
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研究期間 (年度) |
2009-07-23 – 2014-03-31
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キーワード | 地殻流体 / 地震発生過程 / マグマ生成過程 |
研究概要 |
鳴子周辺および紀伊半島に設置した臨時観測網のデータを用いて,地震波速度トモグラフィを実施した.得られた低速度域は比抵抗分布と良く似た分布の特徴を示しており,これらの低地震波速度・低比抵抗の領域は地殻流体の存在を示していると考えられる. 東北地方のスラブ内の地震のPS変換波を用いて,海洋性地殻内がハンレイ岩質のままであることを確かめると同時に,そこには多量の水が存在する可能性が高いことを明らかにした.さらに,波形の相似性の高いスラブ内地震群の解析から,岩石の相転移に伴う体積変化と間隙圧上昇によってこのような地震が発生している可能性が高いことを示した. 地震波散乱によるP波・S波のモード変換・エネルギー分配に着目して日本列島下の不均質性強度のマッピングを行い,西日本に比べて東日本で不均質強度が大きいことを示した.また,媒質の非弾性減衰と地震波の後方散乱の寄与の総和としてのS波減衰構造を推定した結果,第四紀火山の下ではランダム速度不均質のみならず減衰も周囲に比べて強いことが明らかになった. 地殻流体の分布を推測する上で重要なVp/Vs値を精確に測定するために,実験装置の改良を行い,最大1.5 wt% の含水率で岩石のP波速度を最高500 ℃の高温条件で測定できるようになった. 2011年東北地方太平洋沖地震発生後に,様々な場所で地震活動が活発化し,これらの誘発された地震活動は時間とともに場所が移動していることを明らかにした.これは,本震の地震動に伴って上昇した高間隙圧流体によって地震の誘発・移動が生じたと解釈することができる. 西南日本のプレート境界滑りのシミュレーションを行い,高間隙圧と不均質な摩擦パラメータの分布に起因する,大アスペリティの周りのゆっくり滑りが巨大地震の発生前には活発化し,特に浅部で顕著となることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年東北地方太平洋沖地震の発生により,プレート境界の間隙水圧が高いことの検証が進んだ.また,この地震に誘発された地震活動の解析から,内陸の地震発生域も強度が低く,間隙水圧が高いことが示唆された.また,沈み込んだ海洋性地殻内の地震波速度から,二重深発地震面の上面では流体が多く存在している可能性が高いことがわかった.これらは当初の予定よりも早く研究が進展した部分である. 鳴子周辺のトモグラフィの実施や東北地方の減衰構造の推定,紀伊半島での比較観測での構造推定,低周波地震の解析,散乱体の解析,弾性波速度推定実験,プレート境界のシミュレーション等については当初予定通り研究が進んだ. 以上を勘案し,総合的にはおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標はGeofluid Map の構築にあり,そのために観測のみならず,実験や数値シミュレーションも行いながら,地殻流体の情報を抽出してきた.2011年東北地方太平洋沖地震の発生により,地殻の応力が大きく変化し,これによって地震活動に変化が見られている.このような異なった応力条件の場での地震活動の比較を行うことにより,間隙水圧の情報が得られると期待される. 地震波トモグラフィでは水の量の情報が得られ,A01-2班による比抵抗構造の推定では,水の連結度の情報が得られるのに対して,地震活動で推定されるのは間隙水圧の情報であり,3者は相互に関係するものの,独立な情報を含んでおり,これらを総合的に解析することにより,地殻流体の分布のみならず形態についても拘束条件が与えられるものと期待される.
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