計画研究
5カ年の研究目標は、沈み込み帯における流体相の3次元分布を、電磁気観測から解明することである。典型的な沈み込み帯である東北日本弧の中央部に位置する宮城県鳴子地域周辺で電磁気観測を高密度に行い、地殻・上部マントルの3次元比抵抗構造を推定する。また、比抵抗構造から流体の量と連結度を推定する為に、含水岩石の高温高圧実験を行う。さらにこれらの結果と、地震波トモグラフィーや粒界物性実験の結果を参考にして、Geofluid Mapを作成し、地殻流体が地震火山活動に及ぼす影響を定量的に解明する。鳴子周辺の地殻内の流体分布を解明するために、西側の地域(三途川カルデラおよび向町カルデラ)で広帯域電磁気観測を、3kmグリッド、81観測点で実施し、高品位データを取得した。また、昨年度までのデータを用いて、3次元構造解析を進めた。下部地殻では背弧側にSSW-NNE走向の低比抵抗が広がり、活火山の直下(深度3km程度)まで、その浅部延長が見える。火山が存在しない前弧側にも地殻内に低比抵抗異常が存在する。地殻内地震はこれら低比抵抗領域を避けるように分布する。また、上部マントルの比抵抗構造を解明するために、長周期電磁気観測を鳴子周辺で20kmリッドにて観測を実施した。予察的なモデル計算からは、上部マントルの低比抵抗異常が背弧側で鉛直状に上昇してから、前弧に向かって続く様子が解析された。さらに、太平洋東北沖地震後に誘発地震活動が高まっているいわき市周辺で地殻流体の分布を明らかにするために電磁気観測を実施した。岩石実験に関しては、超臨界状態の水に対する鉱物の溶解でバルク比抵抗が下がる可能性を検討したが、高塩濃度の流体でないと観測値を説明できない。また、下部地殻条件で角閃岩の脱水実験を行い、電気伝導度が3桁程度上昇することを見出した。高塩濃度の流体が脱水している必要がある。
2: おおむね順調に進展している
野外電磁気観測については、地殻を対象とした広帯域電磁気観測、マントルを対象とした長周期電磁気観測とも順調に進行している。また高温高圧岩石実験については、基礎的な実験上の問題点が解決され、流体を含んだ下部地殻条件での岩石の比抵抗測定が可能となった。
今後の野外電磁気観測に関しては、順調に観測が進行しており、詳細な3次元モデル解析に必要なデータが取得されてきている。また下部地殻条件における含水岩石の比抵抗測定に関して、より現実的な溶液を用いた実験が行える状況になった。今後は、他班との連携を深めて、比抵抗と地震波速度の分布を統一的に検討するためのモデル(PROM)作成に向けた努力も必要である。
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