研究領域 | 地殻流体: その実態と沈み込み変動への役割 |
研究課題/領域番号 |
21109003
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小川 康雄 東京工業大学, 火山流体研究センター, 教授 (10334525)
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研究分担者 |
芳野 極 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (30423338)
藤田 清士 佐賀大学, 国際交流センター, 教授 (00283862)
市來 雅啓 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80359182)
藤 浩明 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40207519)
上嶋 誠 東京大学, 地震研究所, 准教授 (70242154)
神田 径 東京工業大学, 火山流体研究センター, 准教授 (00301755)
松島 政貴 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (20242266)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 比抵抗 / 流体 / 高温高圧岩石実験 / MT観測 |
研究実績の概要 |
鳴子火山周辺の地殻内の流体分布を解明するために、鳴子火山の北東側の2008年岩手宮城内陸地震震源域(岩手県奥州市一ノ関市および宮城県栗原市)で広帯域電磁気観測を、3㎞グリッド、64観測点で実施した。また、昨年度までのデータを用いて、鬼首・鳴子・向町・三途川カルデラの3次元構造解析を進めた。全観測点は181で4周波数を解析に用いた。インバージョンの結果、最も顕著な構造は向町カルデラの直下深度10kmより深部にある1-10ohmmの低比抵抗ブロックである。この低比抵抗は鳴子火山に向かって東向きに地表下2kmまで伸びる。鬼首カルデラでは、カルデラの西半分にこの低比抵抗の北方への延長部が存在している。また、上部マントルの比抵抗構造を解明するために、鳴子周辺で20kmグリッドにて長周期電磁気観測を実施した。日本海の既存海底観測点3点も含めた全55点、5周波数について解析した結果、鬼首鳴子火山の直下50kmから深度20kmに至る低比抵抗異常(1-10ohmm)が解析された。また同様の構造は月山直下にもあるが、比抵抗値は100ohmm程度にしか下がらない。これは流体の塩濃度の違いを反映しているのかも知れない。 岩石実験に関しては、アルバイトー水系で電気伝導度が高くなるという予想外の結果を得た。水の塩濃度を高めればさらに電気伝導度の上昇が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
野外電磁気観測については、地殻を対象とした広帯域電磁気観測、マントルを対象とした長周期電磁気観測とも順調に進行している。三次元比抵抗構造モデル計算も地殻・上部マントルについて、それぞれマルチスケールで求めることに成功している。これらの計算においては、既存データも活用している。高温高圧岩石実験については、アルバイトー水系で、電気伝導度が上昇するという予想外の成果がえられつつある。含水岩石の高温高圧実験や、分子動力学計算による流体自体の電気伝導度計算の研究が進展してきていることを受けて、三次元比抵抗構造と地震波速度構造とを整合的に解釈するツール開発も順調に進み始めており、専門分野を超えたが融合研究が順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
地殻構造探査のための広帯域電磁気観測については、観測点へのアクセスが困難なエリアで観測点間隔が疎になっているところがある。特に、三途川カルデラ南東部では観測点が疎であるため、補充観測を行う。マントル構造探査のための長周期電磁気観測については、データの品質が十分でなかった地点で再測定を行い、さらに、観測網を山形・宮城県の南部に展開する。以上のことによって、広帯域・長周期ともデータセットを完成させる。また、2011年の東北地方太平洋沖地震前後の比抵抗構造の時間変化の有無を検討するために、繰り返し観測を行う。 下部地殻条件における含水岩石の比抵抗測定に関しては、アルバイトー水系で予想外の高電気伝導度が期待できるので、さらにアルバイトー塩水系での実験も進める。 最終年度であるので、他班との連携をさらに深めて、比抵抗と地震波速度の分布を統一的に検討するためのモデル(PROM)作成に向け検討を進める。
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