研究領域 | 地殻流体: その実態と沈み込み変動への役割 |
研究課題/領域番号 |
21109005
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 美千彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70260528)
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研究分担者 |
渡辺 了 富山大学, 理工学研究部, 准教授 (30262497)
武井 康子 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30323653)
平賀 岳彦 東京大学, 地震研究所, 准教授 (10444077)
清水 以知子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (40211966)
河村 雄行 岡山大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (00126038)
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キーワード | 地殻流体 / 白雲母 / 結晶粒界 / 非弾性効果 / 蛇紋岩 / 地震波速度 / 動的再結晶 / クリープ断層 |
研究概要 |
Geofluid Map作成に向けた、流体を含む岩石の物性に関する研究として、まず分子動力学法とX線反射プロファイル法により、白雲母と電解質溶液との界面から1nm以上離れた部分では粒界水はバルク水と同じ挙動を示し、雲母の粒界水が特別な電気比抵抗を示すことは予想されず(上部地殻の低電気比抵抗が「湿った鉱物界面」では説明できない)、連結したバルク水の存在が必要であることが明らかとなった。このような予想を裏付けるため、下部地殻・マントルの捕獲岩の粒界の直接観察を行った。ナノスケールの微細な構造を保ったまま開いて観察する技術を用いたところ、結晶の粒界に、流体相の関与する結晶成長や溶解作用の痕跡が多数見出され、粒界における面的な地殻流体の存在が示された。また、A01-1が観測した弾性波速度から流体の存在量や形態を見積もるための、非弾性効果の研究が、広帯域強制振動型の実験装置の開発によって大きく進展した。多結晶体の減衰スペクトルが、マックスウエル周波数で規格化された無次元周波数のみの関数として表されることが示され、それを用いてマントルでの地震波減衰を見積もれるようになった。さらに、蛇紋石化した変形マントル物質の縦波・横波速度とその異方性を180MPaの封圧下で測定することに成功し、マントルにおける含水鉱物の分布をより精密にイメージングできるようになった。次に、レオロジー研究においては、動的再結晶における結晶粒径の定常モデルが確立された。また雲母と水の界面をMD法と放射光X線散乱回折実験によって調べ、真水に比べて塩水と鉱物界面の摩擦係数が大幅に低下することを発見した。即ち、濃厚塩水は断層面の摩擦係数を低下させ地震を起こしやすくする働きがあり、地震を起こさずにすべり続けるクリープ断層が潤滑するナノレベルでのメカニズムが世界で初めて解明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A01-2が観測する地殻・マントルの低比抵抗の原因が、連結した地殻流体であることを示すデータが見出だされ、地殻流体の実態解明に向けて、大きな前進が見られた。また地震波速度から地殻流体の存在量や形態を推定するのに不可欠な、多結晶体の非弾性効果に関する研究も進展した。これらのことから、Geofluid Mapの実現に向けて着実に研究が進捗していると評価できる。また、地震の発生メカニズムやレオロジー研究に関する成果もまとまりつつあり、Geofluid Dynamicsの創生も順調に進みつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、大型備品の導入はほぼ終わり、開発的な要素を含む実験装置の導入も進んで、それらを用いた新たな実験結果が出始めている。それらに基づいた成果をとりまとめて行く。研究期間を折り返して後半に入ったので、領域内の連携研究をさらに推進するため、Geofluid Mapの作成,Geofluid Dynamics創成などの融合研究にテーマを絞ったワークショップを開催してゆく。研究代表者のもとでは研究支援者(PD)を雇用し、班内・班間での連携研究のさらなる推進をはかる。研究計画の大きな変更や、特段の問題点はない。
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