研究概要 |
集積化マイクロソリューションプラズマは,従来の点状の液中プラズマ生成法と比較すると,プロセスの要となる気/液界面(プラズマ/液界面)が多数形成されることになるため,プロセスの高効率化が期待できる.これに加えて,なりゆき任せのランダムな形状の気泡を形成する従来の液中プラズマ生成法と比べると,気泡のサイズが多孔体の空孔径によって制限されるため,液体と接する気相のサイズを制御することができるという特長もある.簡単化した計算ではあるが,2桁の気相サイズの増加が,4桁ものOHラジカルフラックスの減少につながることが示唆されており,気泡サイズの制御は,プロセスを均一化,安定化させるためにも必要であると考えられる.こうした気泡サイズの可制御性という特長を維持しつつ,液体とプラズマとの相互作用を更に高効率化するための手法について検討した.具体的には,昨年度実現した多孔質体の一側面だけのプラズマ生成を,多孔質体内部でも生成することを試み,三次元集積化マイクロソリューションプラズマと呼ぶべきプラズマ源の試作を行った.試作に先立ち,数値計算による実現可能性の検討を行った.これにより,多孔質誘電体内において液体流路を狭くした環境では,導電性の液体で覆われた気泡内でも,放電のために必要な十分な電界を印加出来ることを明らかにあした.この計算結果を基にして,多孔質誘電体を用いた三次元集積化マイクロソリューションプラズマ装置を試作し,液体導電率が500uS/cm以下であれば,多孔質体内の気液混合媒質において,体積的なプラズマが生成されることを実証した.また,このプラズマ源が材料プロセシング用として利用できることを金ナノ粒子の合成実験を通じて実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
気泡内のプラズマの診断を,高感度ICCD検出器を用いて計測する計画であったが,予算の3割カットの危惧がなされたため,発注と納品が遅れ,ICCD検出器を用いたデータの取得に遅れが生じている.しかし,液体媒質の電気的特性が放電特性に及ぼす影響については,計算機シミュレーションにより有益な情報を得ることができ,特許出願につながった.
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今後の研究の推進方策 |
集積化マイクロソリューションプラズマを三次元化することに成功し,材料プロセシングも可能であることを示したが,プラズマ源を提案する「つくる班」の班員として,そのプラズマの電子密度や電子温度といった基本物性,並びに,気泡の揺らぎ制御の効果が気液ナノ界面を通じて行われる反応過程に如何なる影響を及ぼすかを示す必要がある.そのためにも,今年度,遅延しながらも導入したICCD検出器を活用するとともに,「みる班」班員とも連携し,得られたプラズマの物性を明らかにする.その際,二次元の方が診断に都合が良い場合は,二次元集積化型に戻り,診断を遂行する.また,「つかう班」班員とも連携し,提案したプラズマ源の有効性を明らかにする.
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