研究概要 |
本研究は,ラジカルと植物性菌細胞のナノ界面階層的反応ダイナミクスをモニタリングする新規システムを構築し,ナノ領域で顕在化するプラズマと細胞との相互反応が細胞階層構造に与えるダイナミクスを分子レベルで明らかにすることを目指している.本年度は,非平衡大気圧プラズマを用いたミドリカビ胞子の不活化において,吸収及び発光分光法を用いた気相診断と様々な条件下での実験から,不活化メカニズムの検討を行った.紫外吸収分光法を用いて,非平衡大気圧プラズマから生成されるオゾン密度を測定した結果,電極から離れるに従い2から8ppmと増加した.しかしながら,不活化効率の振る舞いと逆の結果となった.また,オゾン密度600ppmを発生可能なオゾナイザと不活化効率を比較した結果,プラズマ照射の不活化速度が早いことが明らかになった.また,プラズマから発生される紫外光の不活化効率への寄与を調べた結果,ほとんど紫外光の寄与がなく,ラジカルによる不活化の寄与が大きいことが明らかになって.以上の結果から,紫外光やオゾンの効果は小さく,プラズマにより生成されたOやOHラジカルの不活化に対する効果が大きいことが示唆された. また,プラズマ照射による細胞の変化を調べるために,蛍光観察によるモニタリング手法の構築を行った.DNAを染色するDAPI,及び細胞膜を染色するDiIを用いてミドリカビの蛍光観察に成功した.また,DiIを用いて紫外ランプ殺菌とプラズマ殺菌を比較した結果,プラズマ殺菌の場合のみ核が染色されることを見出した.この結果から,プラズマから発生される酸素系活性種が細胞膜,細胞壁をナノレベルで酸化分解していることが示唆された.
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