研究概要 |
本研究は,ラジカルと植物性菌細胞のナノ界面階層的反応ダイナミクスをモニタリングする新規システムを構築し,ナノ領域で顕在化するプラズマと細胞との相互反応が細胞階層構造に与えるダイナミクスを分子レベルで明らかにすることを目指している. 本年度は,プラズマ照射による細胞の変化を調べるために,共焦点レーザ走査型蛍光顕微鏡を用いて蛍光観察を行った.生きた細胞の内部を染色できるCelltracker Orangeを用いて,プラズマ照射時間を変えて蛍光を発している胞子の大きさを調べた.照射時間を長くすると,蛍光を発している部分が減少し,胞子の外側から蛍光が順次退色していることが判明した.この結果から,ラジカルが細胞内に侵入していることが明らかになった.細胞膜を染色するDiIを用いて,プラズマ処理,湿熱処理,紫外光処理後のミドリカビ胞子の様子を観察した.その結果,プラズマ処理の場合のみにおいて細胞膜だけでなく細胞質も染色されることがわかった.また,酸素ガス流量を増加させると,細胞質が染色される確率が高くなることから酸素系活性種酸素系活性種が細胞膜や細胞壁の機能を阻害して,細胞内部まで侵入していることが明らかになった. 反応性酸素種による細胞壁の破壊を調査するために,2光子共鳴レーザ誘起蛍光法をもちいて基底状態の原子状酸素ラジカル密度の空間分布計測手法を構築した.原子状酸素ラジカルの温度は300(±50)K程度であることがわかった.また,プラズマ源から1~2mmまでは,10^<14>cm^<-3>以上の密度でプラズマヘッド長20mmにわたって存在しすることがわかった.Z軸方法の密度分布は,プラズマ生成部からZ軸方向に離れるにしたがって急激に酸素ラジカルの密度が減衰していることが明らかになった.
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