計画研究
ラジカルと植物性菌細胞の階層的反応,特にナノ界面で顕在化するプラズマと細胞との相互作用反応の解明を目的とした.殺菌に大きな影響を及ぼすOラジカルなどの反応性酸素種(reactive oxygen species : ROS)の効果に着目し大気圧酸素ラジカル源を開発し,中性ラジカルの効果を検証した.真空紫外吸収分光法を用いて基底状態酸素原子と励起状態酸素分子の密度測定とその殺菌効率を評価した.照射距離を変化させラジカルによる殺菌を行った結果,照射距離に依存して殺菌効率は変化した.基底状態酸素原子は寿命が0.5ms以下と短いこと、ミドリカビ胞子の殺菌においては効率が高い殺菌因子の一つであることが示された.ラジカルと菌の階層構造部位とのナノ界面時空間相互反応ダイナミクスを,種々の手法を用いて解析を試みた.具体的にはSEMを用いて細胞外側組織の形状変化を,共焦点レーザ走査型蛍光顕微鏡を用いて,ラジカルと細胞外部組織の反応を検証した.さらにリアルタイムESR測定システムを構築し,細胞内フリーラジカルの同定とその変化を明らかにした.基底状態酸素原子は細胞表面の構造を大きく破壊することなく細胞内部へ浸透する.その結果,細胞膜や細胞質に存在する細胞小器官へ作用し,細胞内部から生体機能を失活させることが示唆された.また,ESR測定により細胞内のフリーラジカルの存在が明らかになった.このラジカルはベンゾキノンであると考えられる.照射時間の増加とともに,ベンゾキノンの信号が減少した.キノンは抗酸化作用をもつといわれており,ラジカル照射によって抗酸化作用が失われ,脂質過酸化反応等の酸化が促進されたされた結果,細胞死に至ったと推測される.
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した①気相及び液相ラジカル密度測定と殺菌効果,②共焦点レーザ蛍光顕微鏡による2次元反応ダイナミクスモニタリング,③ナノ界面形状及び分子構造解析のそれぞれについて,概要に記述したようにおおむね達成している.
今後は,さらにミクロな領域,すなわちナノ界面での細胞組織の変化に着目し,ラジカルとナノ界面(細胞壁、細胞膜)や細胞内部の変化の解析を行い,プラズマとカビ細胞との相互作用を解明していく.
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