研究領域 | プラズマとナノ界面の相互作用に関する学術基盤の創成 |
研究課題/領域番号 |
21110007
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
杤久保 文嘉 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 教授 (90244417)
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研究分担者 |
内田 諭 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 准教授 (90305417)
白井 直機 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 助教 (80552281)
小田 昭紀 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (70335090)
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キーワード | 大気圧プラズマ / 直流グロー放電 / プラズマ-液体界面 / ナノ粒子生成 / 自己組織化 / プラズマシミュレーション / 電解反応 / 古典分子動力学法 |
研究概要 |
本研究は非平衡プラズマと液体が接する"プラズマ気液界面"の相互作用解明を目的とする。安定なプラズマ気液界面を得ること、液面への電子/イオン照射の効果を分離するために、液体電極と希ガス流を用いた大気圧直流グロー放電を対象とする。今年度は以下の成果を得た。 1.液体電極と希ガス流を用いた矩形波電圧駆動による大気圧グロー放電において、発光の時空間分解計測から放電進展に伴う各種発光種や回転温度の成長を調査した。特に、窒素第二正帯の回転温度が放電開始後1μs程度で室温から500Kに達し、その後も緩やかに上昇して200μsで1200Kの定常に達した。 2.液面に対して、電子、または正イオンの照射を起点とする液中反応を調べるために、液中のpHの変化、及び、ラジカル捕捉剤を用いてOHラジカルの量を調べた。電子照射によってOH^-が、正イオン照射によってH^+が生成されることを明らかにした。また、電子/イオン照射のいずれの場合もOHラジカルが生成されることを明らかにした。これらを液中反応の反応係数と併せて議論している。 3.液体陽極を用いた大気圧直流グロー放電において、陽極上に現れる自己組織化模様の形成条件とそのパターンを、電極間距離、電流値、ガス流量、液体の導電率をパラメータとして分類した。 4.気体力学を考慮した大気圧直流グロー放電のシミュレーションを実施した。大気中でHe流を用いた直流グロー放電では、プラズマ形成領域がHeのモル分率に強く依存するため、ガス流速の影響、印加電圧の極性の影響を中心として調べた。 5.気液界面現象として、低エネルギーの重粒子(ここでは水分子)を水面に入射した際の界面を古典分子動力学法により調べ、液面の局所的加熱や水分子の気化の様子を明らかにした。また、プラズマ電解反応を想定して液体に外部電界を印加した条件、液体をNaCl溶液とした条件、液体の初期温度を360Kとした条件の計算も行い、各パラメータの影響を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験、及び、シミュレーションともに、当初計画の順番を前後した部分はあるが、おおむね順調に進んでいる。また、プラズマから荷電粒子照射による液中反応の検討、放電プラズマの自己組織化模様を切り口とした研究など、当初は計画になかった研究にも取り組んでいる。但し、成果を論文として公表することに関してはやや遅れており、これを急ぎ進める。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ-液体界面相互作用としては、プラズマによって液中に誘起される反応場を課題の中心に据えて、実験、及び、シミュレーションによって現象解明を行う。ここでは、領域内の関連グループとの連携を図りながらこれを進める。また、理論的検討に関しては、放電の自己組織化現象を分岐理論によって解明する。分岐理論はプラズマ-ナノ界面の諸現象を記述する非線形方程式の安定性、即ち、ゆらぎを抑制したり加速したりするパラメータの抽出にも展開することを視野に入れている。
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