研究領域 | プラズマとナノ界面の相互作用に関する学術基盤の創成 |
研究課題/領域番号 |
21110007
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
杤久保 文嘉 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (90244417)
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研究分担者 |
内田 諭 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90305417)
白井 直機 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (80552281)
小田 昭紀 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (70335090)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / 直流グロー放電 / プラズマ-液体界面 / 金属ナノ粒子生成 / 自己組織化 / プラズマシミュレーション / 電解反応 / 古典分子動力学法 |
研究実績の概要 |
本研究は非平衡プラズマと液体が接する“プラズマ気液界面”の相互作用解明を目的とする。安定なプラズマ気液界面を得ること、液面への電子/イオン照射の効果を分離するために、液体電極と希ガス流を用いた大気圧直流グロー放電を対象とする。今年度は以下の成果を得た。 1.プラズマから液面への電子/正イオン照射によって液中に誘因される反応について、局所的pHの変化、捕捉剤によるOHラジカル計測、及び、硝酸銀溶液や塩化金酸溶液を用いた金属ナノ粒子生成結果より検討した。特に、低エネルギーの正イオンが照射された際の電荷交換衝突を起点としたH+やOHラジカルの生成について言及した。 2.プラズマから液面への電子/正イオン照射による金属ナノ粒子の生成機構について議論し、銀ナノ粒子と金ナノ粒子では生成機構が異なることを示した。また、硝酸銀・塩化金酸混合溶液に電子を照射することでAu-core/Ag-shellの二重構造のナノ粒子が生成できることを初めて示した。 3.液体陽極を用いた際に観測される放電スポットの自己組織化現象について、負性ガスがこの形成を促進することを明らかにした。 4.大気中でのHe流を用いた直流グロー放電について、流体解析とプラズマ解析を連成し、プラズマによるガス加熱効果と体積力が考慮されたシミュレーションを実施した。この結果、ガス温度が局所的には1500 K程度に上昇すること、電子エネルギーの増加によりプラズマ密度が増すこと、プラズマ密度がガス温度に反比例して増減することなどを示した。空間的にガス組成の異なる大気圧非平衡プラズマについて、このような連成解析を実施したのは本研究が初めてである。 5.気液界面現象として、低エネルギーの酸素原子イオンを水面に入射した際の分子レベルでの動きを古典分子動力学法により調べ、照射粒子の侵入深さと放出水分子数との関係、液面の局所的加熱の様子を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究項目は以下の3点であり、これに関する自己評価を記載する。 ①プラズマ電極を用いた電解反応の解明:プラズマから電子、またはイオンを照射した際に液中に誘導される反応について、局所的なpHの変化、及び、液中に生成されるOHラジカル量の定量からほぼ推測できた。液中のイオン濃度計測がやや遅れているが、平成25年度の早い段階で完了する見込みである。この次のステップとして、推定されたプラズマ-液体界面反応を考慮した、プラズマ支援電解反応の数値解析を行うので、これについてはほぼ予定通りである。 ②放電の自己組織化現象の解明:液体陽極上に出現する放電のアノードスポットの自己組織化現象について、パターン形成における負イオンの効果を実験的に指摘した。放電シミュレーションに分岐理論を適用することに関して、平成24年度は定式化や手法等を詰めてきたので、平成25年度にこれをシミュレーションへと展開する。 ③プラズマ-バイオ系相互作用モデリング:現時点で対外的な発表まではできていないが、流体モデルをベースとした大気圧プラズマモデルの構築はほぼ出来つつある。これによりラジカルフラックスの定量的な議論も可能となる。
以上のように、実験、及び、シミュレーションともに、当初計画の順番を前後した部分はあるが、おおむね順調に進んでいる。但し、成果を論文として公表することに関しては遅れており、これを急ぎ進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題については以下の3点について、当初の予定通りに実施する。 ①プラズマ電極を用いた電解反応の解明:プラズマ-液体界面相互作用としては、プラズマによって液中に誘起される反応場を課題の中心に据えて、実験、及び、シミュレーションによって現象解明を行う。領域内の関連グループ(特に、大阪府立大の白藤立教授のグループ)との連携を図りながらこれを進める。 ②放電の自己組織化現象の解明:放電の自己組織化現象を分岐理論を用いて解明する。分岐理論については首都大学東京の倉田和浩教授(数理情報科学専攻),小口俊樹准教授(機械工学専攻)と学内研究グループ(ミニ研究環)「結合非線形システムにおけるパターン形成と制御」を組み,この中で数学的な助言を受けながら進める予定である。 ③プラズマ-バイオ系相互作用モデリング:確実にシミュレーションを実施し、実験結果と対比しながら反応モデルの信頼性を高める。
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