研究概要 |
塩素系・臭素系プラズマによるシリコンエッチングを対象に,実験・シミュレーション両面から,プラズマと表面・界面のナノスケール相互作用の特徴,および相互作用の揺らぎ,について機構解明とモデリングを進めた.具体的には,(1)独自の3次元原子スケールセルモデル(ASCeM-3D)によるエッチング加工形状シミュレーションを発展させて,ナノスケールデバイス作製で問題となるパターン側壁に生じるラインエッジラフネス(LER)様のナノスケール表面リップル構造(イオン入射角度に依存)を再現した.このような表面リップル構造の発現は,プラズマから表面への入射粒子の揺らぎや,表面相互作用の揺らぎに起因すると考えられているが,従来のモデルでは再現できなかったものである.(2)古典的分子動力学(MD)シミュレーションを発展させて,ラジカル入射の効果と斜め入射イオンの効果を考慮に入れたモデルを開発し,実際のプラズマエッチングのパターン側壁のラフネス形成にかかわる物理的・化学的メカニズムを原子レベルで調べた.(3)Cl_2プラズマによるSiエッチング表面のラフネス(凹凸)と反応生成物組成を,原子間力顕微鏡(AFM)とフーリエ変換赤外(FTIR)吸収分光法を用いて系統的に調べ,エッチング速度と表面ラフネス・反応層厚さの間の相関関係を明らかにした.(4)基板表面のシースを含むプラズマ状態をシミュレートする粒子モデル(PIC/MC)について,実際のエッチングに用いるCl_2プラズマのモデルを構築し,基板に入射するイオンの動的挙動に対する負イオンの影響を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的のうち,「プラズマと表面・界面との相互作用に関する,微細パターン底面・側面においてナノスケールの微小な寸法誤差、形状異常、界面変質層を生じる要因・機構解明とモデリング」をほぼ完了し,現在「ナノスケールで初めて顕在化する相互作用、特にナノスケール相互作用の揺らぎの機構モデルの構築」に注力しており,目的達成の道筋の2/3あたりにさしかかっている。これらの進捗過程において,特に,独自の3次元原子スケールセルモデル(ASCeM-3D)の発展の寄与が大きい.
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今後の研究の推進方策 |
今後,「ナノスケールで初めて顕在化する相互作用、特にナノスケール相互作用の揺らぎの機構モデルの構築」とともに,「このモデルにもとづく揺らぎの抑制法/高精度制御法の創出と、揺らぎの無い10nmレベルの究極の極微細加工プロセス構築」に関する研究を進める。特に,モデリングでは,大規模分子動力学(MD)シミュレーションによる表面形状/ラフネスの再現をはかるとともに,実験では,プラズマ生成と基板バイアスのパルス制御による揺らぎの抑制/制御を試みる.
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