研究領域 | プラズマとナノ界面の相互作用に関する学術基盤の創成 |
研究課題/領域番号 |
21110010
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
永津 雅章 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (20155948)
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研究分担者 |
荻野 明久 静岡大学, 創造科学技術大学院, 准教授 (90377721)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プラズマ / 微粒子 / ナノ界面 / バイオ活性 / 表面修飾 / 官能基 / 医療応用 / 環境応用 |
研究実績の概要 |
本研究では、ナノサイズ微粒子のバイオ・医療応用に注目し、ナノサイズ境界面を有する各種微粒子とプラズマとの表面相互作用に関する研究を実施し、医学・理学分野を融合した新学際的研究領域の創成に資することを目的としている。以下に平成24年度の主な研究成果を列記する。 1.プラズマ化学修飾による各種微粒子官能基添加の高効率化:外部パルス電圧印加によるアンモニアプラズマ処理により、グラフェン層外包磁性体ナノ微粒子のアミノ基修飾率が3~4倍向上することを確認した。また、金微粒子を核とするグラフェン外包ナノ微粒子の直流アーク法による合成およびプラズマ表面修飾に成功した。 2.蛍光体微粒子への生体適合性付加: レーザーアブレーションにより生成したZnOナノ蛍光体微粒子のアンモニアプラズマによる表面修飾を実施し、アミノ基修飾が可能であることを示した。本研究の成果により、特定タンパク質やウイルスなどの検出用蛍光体としての応用の可能性が示された。 3.化学修飾微粒子への糖鎖固定化とウイルス回収システムへの応用:各種官能基修飾した微粒子表面に、インフルエンザウイルスに選択的に結合する抗体を固定化した磁気微粒子を用いた実験の結果、10数倍の高い回収率でインフルエンザウイルスの磁気回収に成功した。本結果は、インフルエンザウイルスの特定部位に選択的に結合する抗体を用いたウイルスの高濃度化による高速検出システムへの応用の可能性を示唆している。 4.ナノ界面プラズマ相互作用による新規ナノ材料低温成長:グラファイト外包金属ナノ微粒子を用いたイオンエネルギー制御アンモニアプラズマ照射により、微粒子外周からのナノグラフェンの低温成長に成功した。 5.研究成果として査読付き学術論文に11編、国際会議に24件(招待講演4件)、国内学会に41件 (招待講演1件)の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の交付申請書に記載した研究目的に沿って、(1)プラズマ化学修飾による各種微粒子官能基添加の高効率化、(2)蛍光体微粒子への生体適合性付加、(3)化学修飾微粒子への糖鎖固定化とウイルス回収システムへの応用、および(4)ナノ界面プラズマ相互作用による新規ナノ材料低温成長の研究課題に対して、計画通りに研究を遂行している。得られた研究成果は、Appl. Phys. Lett.(IF=3.844)、Appl. Phys. Express(IF=3.013)、Plasma Sources Sci. Technol. (IF=2.521)、Plasma Process. Polym. (IF= 2.468)などの国際的に評価の高い査読付き学術論文に11編発表しており、また国際会議に24件(招待講演4件)、国内学会に41件 (招待講演1件)の発表を行うなど、大学院生などの若手研究者の教育研究にも大きく貢献している。このため、現在までの達成度として、「②おおむね順調に進展している。」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究における今後の研究推進方策として、平成21年度からこれまで行ってきた研究をさらに発展させ、以下の研究項目を実施したいと考えている。 (1) プラズマ化学修飾による各種微粒子表面の官能基添加の高効率化:プラズマ処理による各種微粒子のレーザ散乱計測と官能基の定量評価技術の開発を行う。また、基板バイアス時のイオンエネルギー分布の測定と行い、表面修飾との関係を明らかにする。 (2) 化学修飾された微粒子への糖鎖、多糖類の固定化:各種官能基を修飾した磁気ナノ微粒子表面にウイルス検出用リガンドなどの糖鎖を固定化したナノ微粒子によるウイルス選択検出およびバイオ分子センサーに関する研究開発を、バイオ・医療分野の研究者との共同研究により世界に先駆け実施する。 (3) ZnOなどの蛍光体微粒子への生体適合性の付加:金属酸化物微粒子や磁性体微粒子表面のプラズマ表面修飾による官能基導入およびバイオ高分子固定化技術の開発を行い、特定タンパク質等の標識用蛍光体の開発を行う。 (4)プラズマ相互作用によるバイオ高分子の生物機能の制御:プラズマ表面相互作用によるアミノ酸、ペプチドなどの分解・合成過程について、プラズマ粒子種、粒子エネルギーとの関係を明らかにし、生物機能制御の可能性を追求する。 以上の研究課題の実施にあたり、研究室の学術研究員および大学院生、および創造科学技術大学院・統合バイオサイエンス部門の研究者および学外の研究者との連携を図り、研究を遂行する。また、計画研究A01班の佐々木浩一教授(北大)、さらにA02班の白谷正治教授(九大)、作道章一准教授(琉球大)との他研究班との連携研究を進め、研究成果のさらなる展開を図っていきたい。
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