計画研究
本プロジェクトで用いられる主要な合成手法であるレーザ支援プラズマCVDによる高密度BNの生成において、「光誘起相変化」が枢要な素過程の一つである。又、透明半導体開発において、ドーピングが基礎的な手法である。この光誘起相変化とドーピング双方の基礎研究において、結晶構造の詳細な解明が不可欠である。そこで、本年度においては、ラマン分光顕微鏡を新規導入し、同手法を用いた解析手法の開発に着手するとともに、x線解析による詳細な結晶構造の検討を行った。ここで、結晶構造解析の指標として、(1)close-packing index、(2)hexagonality、及び(3)metastabilityの三者を新たに採用し、薄膜のX線回折の結果を詳細に解析し、その結果に基づいて、成長機構として"Bond Strength Initiative (BSI) Rule"を提唱するに至った。ここで、(3)metastabilityは小林の第一原理計算による結晶構造の熱力学的安定性で、最も安定なsp3一結合性3h-BN(cBN)に対する相対的なエンタルピーを用いた。われわれが発見した新規BN多形、sp3-結合性5H-BN、6H-BN、30H-BN、さらに理論的に可能な10H-BN、12H-BN等において、(1)(2)(3)の指標による定量的な解析により、明瞭な法則性が見出された。この解析手法をSiC、AlN等の他の2元系化合物に拡張し、ここで見出された法則性が一般的に、多形の安定性の議論において有効であることが見出された。気相からの合成手法においては、metastability(バルクとしての)が低い多形が必ずしも得られるわけではなく、むしろ、個別的な結合強度の高いものが優先的に成長することが見出された。そこで、気相成長に於ける多形出現の優先順位を説明する原理として、Bond Strength Initiative Ruleを提唱した(論文投稿中)。
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J.Phys.D : Appl.Phys. 42
ページ: 225107-225112