研究領域 | プラズマとナノ界面の相互作用に関する学術基盤の創成 |
研究課題/領域番号 |
21110011
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
小松 正二郎 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (60183810)
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研究分担者 |
小林 一昭 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (00354150)
知京 豊裕 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (10354333)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プラズマ / レーザ / 透明半導体 / BN / 反応拡散系 / 自己組織化 / 階層性 |
研究実績の概要 |
1. 前年度の報告にある強力X線源に、新たに0.3mmφおよび0.1mmφのX線コリメータを装着した。ステップ・モータ駆動による微動装置付きXYステージを用いることにより、薄膜試料面上の特定点からのX線回折ピークを選択し、その強度をXY座標に応じて測定し、それらの(X、Y、XRD強度)のデータをマッピングする手法を導入した。コリメータの使用によってXRD強度も著しく減少し、BN自体からのXRD強度のマッピングには測定時間がかかりすぎるため、今回はSi基板からのX線回折強度(の反転)のマッピングを行った。SiからのXRD強度は基本的に照射位置におけるBN膜厚に反比例すると考えられるため、本手法により、BN薄膜自体の示す(不均一な)パターン形成が明らかになる。 2. 上記実験の結果、走査型電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡で観察されたレーザ強度分布の不均一性によるパターンに対応するXRDマッピング・パターンが得られた一方、それらが見いだし得ない(質量)による分布も明らかになった。更に、6rpmで基板を回転して成長させた薄膜試料において、光学顕微鏡にもSEMにも見いだせない、規則的なパターン形成(太鼓の振動におけるベッセル関数の示すパターンにも相似か)が発見できた。 3. 上記回転基板試料の場合、① 細かい同心円状のパターン(光学顕微鏡)、② XRDマッピングによる放射的対称性を持つパターン、③ SEM によるマスクメロンのしわ状のパターン、 ③’ SEMによるミクロコーンの分布、という三段階の階層性をもつ構造・パターン形成が発見された。 4. 上記研究結果により、プラズマCVDという反応-拡散系を例として、パルス・レーザーによる周期的なエネルギー供給と、成長系のプラズマ・レーザ静止系に対する相対的回転という複雑な動的物理化学系において、階層的秩序の自己組織的形成が、初めて見出された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(理由)揺動励起による非線型現象と物質科学の交差する未知の領域が、本新学術研究の開拓すべきフロンティアである。本研究では、プラズマCVDという本来、反応拡散系でありながら、従来は、そこでパターン形成が生じ得ない条件下でしか用いられていなかったために、それが意識されなかった系に、生成系の相対的回転運動とパルス・レーザーによる周期的エネルギー注入を導入することで、四段階の階層的なパターン形成が生成することを世界に先駆けて実験的に発見したこと。
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今後の研究の推進方策 |
1. 導入が遅れていた、顕微ラマン分光のマッピング装置・ソフトウエアの装備が完了したため、上記の階層的構造の自己組織的形成を、sp3結合性BNの固有振動モードを利用することによって、さらに別の観点から探求することが可能になってきた。これにより、上記手法では見逃されてきた新しい階層のパターンが発見される可能性がある。 2. 小林の計算結果のダイアグラムへの導入が遅れているので進め、多形構造化学の材料設計化を進める。 3. 引き続き、超長周期多形構造の探求と決定を進め、ICDDへの登録を行う。 4. 透明性を利用した特性研究を長周期単位胞による新物性発現に関連させて進展させる。
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