研究領域 | 背景放射で拓く宇宙創成の物理―インフレーションからダークエイジまで― |
研究課題/領域番号 |
21111002
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
羽澄 昌史 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (20263197)
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研究分担者 |
吉田 哲也 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (50222394)
都丸 隆行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 准教授 (80391712)
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研究期間 (年度) |
2009-07-23 – 2014-03-31
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キーワード | 宇宙背景放射 / インフレーション / 重力波 |
研究概要 |
インフレーション宇宙の検証は、現代宇宙論の最大の課題である、本計画は、インフレーションの直接の証拠となる原始重力波の検出を目的とする。原始重力波が宇宙背景放射(CMB)に残した特殊な偏光パターンを「犯人の指紋検出」のように見つけるという「CMB偏光Bモード法」を用いる。プロジェクトとしては、チリ・アタカマ(標高約5000メートル)における観測実験QUIETとPOLARBEAR、および将来の小型科学衛星LiteBIRDの設計と開発の三項目を推進する。以下に各項目に関する平成24年度実績を記載する。 QUIET:Wバンドの観測結果をAstrophysical Journalに発表。世界最高レベルのCMB偏光観測結果となった。 POLARBEAR:3000時間以上のCMB観測を達成した。KEKが主導で二号機のデザイン推進した。焦点面クライオスタットの冷却試験をほぼ完了し、光学クライオスタットのデザインを完了した。 LiteBIRD:JAXAのエンジニアおよび、企業との成立性の検討をすすめ、多くのフィードバックをかけ、より実現性の高い概念設計へ発展させることに成功した。日本学術会議、宇宙天文分科会において、LiteBIRDは8つの重要な大型計画の一つに選ばれ、マスタープランへの提案を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
QUIET実験のWバンド観測結果を予定通り発表できた。全体にわたり本領域の研究者がリーダーシップを発揮し、国際会議においてもQUIETを代表して発表を行っている。POLARBEAR実験はチリでの本観測を長時間おこなうことに成功した。さらに、米国側の予算で新たに望遠鏡を追加できることになり、受信機システム(POLARBEAR-2)の設計製作を本領域が主導して進めることができた。予定通りいけば、これは当初の予定を超えたエクストラサクセスとなる。人工衛星LiteBIRDの設計研究も順調に進行し、米国の研究者も含め50人を超える研究者が参加している。研究会等で多数の口頭発表を行っている。研究者コミュニティでも高い評価を得て、学術会議マスタープランへ提案することができた。計画研究A02との連携で、衛星搭載のための超伝導検出器のフィールドテストのプラットフォームGroundBIRDの作成に着手した。これは衛星のプロトタイプとしても機能させ、一石二鳥を狙うデザインとなっている。これも提案時より高いレベルの連携のアイディアである。以上から、研究はおおむね順調に進展していると結論できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調に進展しており、計画研究設定時の目的を達成できると期待される。複数望遠鏡設置という当初の予定を超えたエクストラサクセスも狙っており、予定を超えた成功の可能性がある。しかしこれは研究者が行うタスクが増加していることも意味している。このような状況では、タスク過多によるミスの増加、計画の遅れというリスクが増大する。また、研究予算的にもぎりぎりの状況である。従って、ミスを減らしてプロジェクトを成功に導くこと、予算とスケジュールのより徹底した管理をおこなうこと、を実行していく。各プロジェクトの具体的目標を以下に列挙する。 1)POLARBEAR実験の観測を成功させ、研究期間内に高統計でのBモード探索結果を発表する。POLARBEAR-2のレシーバーシステムの建設を完了する。 2)LiteBIRDの概念設計を終了させ、成立性を確保する。地上での実証実験および計画研究A02との連携による超伝導検出器の試験用テストベンチとしてGroundBIRDを開発し、テスト観測を行う。
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