研究概要 |
本研究の目的は,宇宙赤外線背景放射の観測により,初期宇宙における構造形成を研究することである.近年の宇宙描像では,CMBで観測される宇宙の晴れ上がり期ののち、宇宙年齢1-3億年ごろのダークエイジと呼ばれる時代に,宇宙最初の天体として大質量星(初代星)が爆発的に形成されたと考えられている.初代星の紫外線は宇宙膨張により赤方偏移し,現在は可視・近赤外波長の宇宙背景放射を形成している可能性がある.このような宇宙赤外線背景放射の検出を目指し,人工衛星による観測やロケット実験を実施することが本研究の内容である. 平成20年度と22年度には,宇宙赤外線背景放射の観測を目的とするロケット実験CIBERの2度の打上げに成功し,世界で初めて可視・近赤外波長の宇宙背景放射のスペクトル測定に成功した.その結果,得られたスペクトルが初代星によるものと解釈できることを示した.平成22年度には,「あかり」衛星による近赤外~遠赤外の宇宙背景放射ゆらぎの測定に成功し,その成因は初代星である可能性が大きいことを示した.CIBER実験では,より短波長でのゆらぎ測定に成功しており,これらのデータを統合して波長間の空間相関解析等を行なう.さらに,平成23年度には,CIBERの第3回実験により,可視・近赤外で初めての偏光スペクトルの測定に成功した.今後,観測データの解析により初代星研究の一層の進展をはかる. 本研究では,宇宙赤外線背景放射のゆらぎ測定を多波長バンドで行なう新たなコンセプトのロケット実験CIBER-2の装置開発,さらには究極の宇宙背景放射観測を目指す将来のスペースミッションの(EXZIT,SPICA)検討など,高精度かつ多角的な観測による総合的研究を推進している.平成23年度には,「あかり」やCIBERの結果などから決定した仕様を基に,これらの将来ミッションの搭載機器の熱構造概念設計を開始した.今後は,光学系設計をも含んだ,より詳細な概念設計を進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は,ロケット実験CIBERやあかり衛星による宇宙赤外線背景放射の観測プロジェクトを推進し,初代星を解明することである.平成23年度までに3回のロケット実験とあかり衛星のデータ解析による重要な科学成果を得ることができた.また,次期ロケット実験CIBER-2の装置開発や将来ミッションの検討を着実に進めることができた.これに伴い,本研究期間に達成することを目標としていた成果をあげられる可能性が大きいことから,同評価をつけた.
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今後の研究の推進方策 |
これまでにCIBERロケット実験やあかり衛星による宇宙赤外線背景放射に関する科学成果を得て,着実に領域設定時の目的を達成しつつある.今後は,改良したCIBER実験による新たな研究展開をはかるとともに,次期ロケット実験計画CIBER-2の開発を、現在進行中の設計に基づいて着実に進め,研究期間内での打上げ・観測を目指す.さらに,ロケット実験の延長線上にある将来ミッションの推進として,宇宙背景放射探査機EXZITや大型赤外天文衛星SPICAの装置概念設計と基礎開発をCIBERの観測成果をふまえて研究期間内に行なう.
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