研究領域 | 背景放射で拓く宇宙創成の物理―インフレーションからダークエイジまで― |
研究課題/領域番号 |
21111004
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
松浦 周二 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (10321572)
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研究分担者 |
松本 敏雄 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 名誉教授 (60022696)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 赤外線天文学 / 宇宙物理 / ダークエイジ / 宇宙背景放射 / 初代天体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,宇宙赤外線背景放射の観測により,初期宇宙における構造形成を研究することである.近年の宇宙描像では,CMBで観測される宇宙の晴れ上がり期ののち、宇宙年齢1-3億年ごろのダークエイジと呼ばれる時代に,宇宙最初の天体として大質量星(初代星)が爆発的に形成されたと考えられている.初代星の紫外線は宇宙膨張により赤方偏移し,現在は可視・近赤外波長の宇宙背景放射を形成している可能性がある.このような宇宙赤外線背景放射の検出を目指し,人工衛星による観測やロケット実験を実施することが本研究の内容である. 平成20、22、23年度には,宇宙赤外線背景放射の観測を目的とするロケット実験CIBERの3度の打上げに成功し,世界で初めて可視・近赤外波長の宇宙背景放射のスペクトル測定に成功した.平成24年度は,我々の銀河系内の放射成分の観測値への寄与を詳細に解析し,これまでより確実な宇宙背景放射の観測値を得ることに成功した.その成果論文を投稿準備中である.平成23年度に実施したCIBER第3回実験では,可視・近赤外で初めての偏光スペクトルの測定に成功し,平成24年度はそのデータ解析を進め,過去2回の実験結果との矛盾がないことを確認した. 本研究では,宇宙赤外線背景放射のゆらぎ測定を多波長バンドで行なう新たなコンセプトのロケット実験CIBER-2の装置開発を行なっている.平成24年度は,光学系の設計を行なうとともに光学素子の冷却試験をすすめた.また,これに用いる光学フィルタの設計や赤外検出器の準備を行なった. さらに,本研究では究極の宇宙背景放射観測を目指す将来のスペースミッションの(EXZIT, SPICA)検討など,高精度かつ多角的な観測による総合的研究を推進している.平成24年度は,搭載観測機器の光学系や熱構造の概念設計を実施し,現状の装置概念の成立性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の目的は,ロケット実験CIBERやあかり衛星による宇宙赤外線背景放射の観測プロジェクトを推進し,初代星を解明することである.平成24年度までに3回のロケット実験とあかりデータ解析による重要な科学成果を得ることができた.また,将来ミッション検討を着実に進めることができた.ただし,次期ロケット実験CIBER-2の装置開発について,当初よりも多くの開発項目が必要となったため,予定よりやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでにCIBERロケット実験やあかり衛星による宇宙赤外線背景放射に関する科学成果を得て,着実に領域設定時の目的を達成しつつある.今後も,改良したCIBER実験による新たな研究展開をはかるとともに,次期ロケット実験計画CIBER-2の装置開発を加速し,研究期間内での完成を目指す.さらに,ロケット実験の延長線上にある将来ミッションの推進として,宇宙背景放射探査機EXZITや大型赤外天文衛星SPICAの装置概念設計と基礎開発をCIBERの観測成果をふまえて研究期間内に行なう.
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