研究領域 | 背景放射で拓く宇宙創成の物理―インフレーションからダークエイジまで― |
研究課題/領域番号 |
21111005
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
服部 誠 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (90281964)
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研究分担者 |
大坪 貴文 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (50377925)
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キーワード | 宇宙物理 / 宇宙線 / 理論天文学 / 流体 / 光学赤外線天文学 |
研究概要 |
宇宙創成期に刻印された原始重力波起源の宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光Bモードの検出は、現代宇宙物理学の最重要課題の一つである。しかし、宇宙最遠方から来る微弱なCMB偏光Bモードシグナルは、手間にある天体起源のシグナルに埋もれてしまい、それら前景放射との分離精度により検出限界が決まっている。本計画研究では、独自の観測データと海外の観測プロジェクトで得られる最先端のデータを共同解析し、独自に開発した成分分離スキームを用いることで、前景放射とCMB偏光Bモードの分離精度を10倍以上向上し、原始重力波起源の宇宙マイクロ波背景放射偏光Bモードの検出限界を10倍以上向上することが目的である。 分離精度向上の鍵の一つは、銀河系内ダストの放射スペクトル分布の決定精度の向上にある。これを目的として赤外線観測衛星「あかり」の全天探査データの解析を本研究の柱の一つとして行ってきた。昨年末に「あかり」遠赤外線全天地図第一版を完成しチーム内公開を始めた。この地図の作成は、本科研費で購入した東北大学のハイパフォーマンスコンピューター(HPC)を用いて東北大学にて行った。完成した遠赤外線全天地図から銀河系ダストのスペクトル分布を導出するコードも完成し、既に第一版は完成している。しかし、出来上がった全天地図には顕著な系統誤差が混入していることが判明し、現在「あかり」データから遠赤外線地図を作成するツールの改善を行っている。分離精度向上を最終目標に3次元数値流体シミュレーションを用いた銀河系磁場の3次元構造モデル構築を実施してきた。昨年度は、シミュレーションコードが完成し、先行研究の検証を行った。また、数値シミュレーションで得た磁場モデルを観測量を用いて検証する為の解析スキームの構築を行った。従来、磁場モデルの検証に不向きと考えられていた銀河系内シンクロトロン放射の偏光角分布が、磁場モデルの制限に有効であることを示し、定量的検証法を提案した。この研究は査読論文に投稿済みであるが、審査が長引いて受理はまだである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年3月に起きた東日本大震災の影響で2ヶ月近く活動が停止してしまったこと、その後も復旧・復興関連の作業で多くの時間が割かれたことが影響して当初計画より半年程度進みが遅れている。「あかり」全天地図の作成に使用したHPCは、震災で深刻なダメージを受け本来の性能は十分発揮出来ない状況であったが、騙し騙し運用し何とか昨年末に第一版の地図を完成できた。しかし、HPCが被災したことは研究の進みの遅れに繋がった。また、「あかり」全天地図の完成に重点を置いていため成分分離スキームの構築に掛ける労力が手薄になっていた。観測との比較及び数値シミュレーションを用いた銀河系磁場モデルの構築は、当初想定していなかった大きな反論や課題が浮上し、完成が平成24年度にずれ込んでしまった。
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今後の研究の推進方策 |
被災したHPCは、昨年度は8つある内の一つのノードが使えない状態にあった等深刻な状態にあった。しかし、災害復興費で昨年度末に代替機が納入された。これにより本来の性能を期待できるデータ処理環境に復旧することができた。これにより研究推進の速度アップが図れる。銀河系ダストのスペクトル分布の高精度化に関しては、米国の専門家との共同研究を昨年度末から開始し、「あかり」のみならず他のデータも取り込んで推進する計画でいる。また、ダスト偏光放射モデルの構築に関しては、米国のCMB偏光Bモード観測プロジェクトBICEPとの共同研究を開始し、ダスト偏光放射のデータ提供を受けて推進する。 高精度成分分離スキーム構築に関しては、まず現在広く用いられているテンプレート法に我々が得た銀河系ダスト放射スペクトル分布を取り込んで、これまでのテンプレート法の弱点であった銀河系ダストのスペクトル分布の不定性を解消し、得られる結果の信頼度向上を図る。階層ベイズ法を用いて、新しく得られる銀河系磁場モデルや銀河系ダストスペクトル分布モデルを取り込んだ成分分離スキームの開発も引き続き行う。 HPCが復旧したことで、これまで「あかり」データ解析に専念させてきたHPCを数値磁気流体シミュレーションによる銀河磁場モデル構築へ活用できるようになった。これにより、この研究の進展の速度アップを図る。
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