研究概要 |
上記研究課題について交付申請書に従って研究を行い、当該年度の予定をほぼ完了したので報告する。カタユウレイボヤの受精においては、卵側因子v-Themis-A/Bと、精子側因子s-Themis-A/Bが、アロ認識候補分子であることを報告しているが、そのアレルの数や局在性については不明である。そこでまず、カタユウレイボヤ約100個体のゲノムDNAを抽出し、各個体におけるThemisのアレル解析を行った。A遺伝子座においては、少なくとも16種類のアレルが存在し、B遺伝子座においては,少なくとも7種類のアレルが存在することが示された。また、v-Themisに対するアレル特異的抗体を作製し、v-Themis-Aが卵黄膜にアレル特異的に局在することを証明した。AB両遺伝子のs-Thelnisに関しては、それぞれに特異的な抗体を作製し、免疫染色を行なった。その結果、s-Themisに関しては、A,Bいずれも精子頭部の先端及び鞭毛の付け根、鞭毛全体に存在していることが示された。このことは、両者が共局在している可能性を示唆している。s-Themisは、その構造からカルシウムチャネルと考えられ、精子細胞内へのカルシウム流入を制御していると考えられる。そこで、イオノマイシンを用いて人為的に細胞内カルシウム濃度を上昇させたところ、s-Themisの局在が変化することが示された。同様の局在変化は、自己卵に結合した精子においても観察された。これらのことは、自他認識シグナルが精子細胞内でのカルシウム濃度変化やs-Themisの挙動変化を引き起こすことを示唆している。今後はこの点について詳細に解析する一方で、アレル特異的なタンパク質間相互作用についても検討する予定である。
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