研究領域 | 動植物に共通するアロ認証機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
21112002
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
澤田 均 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60158946)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 受精 / アロ認識 / 精子 / 卵 / 自家不和合性 / ホヤ |
研究実績の概要 |
(1)Themisのアロ認識における役割の解明:s-Themis-A/Bとv-Themis-A/Bのタンパク質間相互作用を解析した。まず、酵母ツーハイブリッド法によるアロ特異的分子間相互作用の検討を行ったが、アレル特異的な相互作用をは確認できなかった。そこで次に、大腸菌でs-Themisとv-Themisを発現させてタグを用いたプルダダウンアッセイにより相互作用を解析した。しかし、v-Themisは発現されるものの、s-Themisの発現効率は極めて低いことが判った。無細胞系での発現も検討しているがs-Themisの発現は容易ではない。v-Themisのアレル特異的な発現を行い、アレルの合致する精子を用いて相互作用実験を行ったが、その実験系においてもアレル特異的な結合は確認されなかった。その理由として、v-Themisの糖鎖修飾が活性発現に必要な可能性、v-Themis-Aとv-Themis-Bの両者のアレルが合致することが精子細胞内応答を惹起するのに必要な可能性、直接的相互作用には別の因子が必要な可能性、などが考えられる。 (2)s/v-Themis-B2/Cの機能について:s/v-Themis-B2/Cがアロ認識に関わるか否かを解析した。アレル既知の親個体の自家受精により、アレル既知の子個体を作出し、他家不和合性が見られるか否かを検討し、s/v-Themis-B2/Cがアロ認識に関与するか否かを解析した。その結果、s/v-Themis-B2/Cもアロ認識に関わることが示唆された。 (3)v-Themis-likeについて:v-Themis-likeと命名した卵黄膜成分で酸処理で抽出される主要因子の解析も行った。この分子はv-Themisと同様にフィブリノーゲン様ドメインを有するが、個体間での多型が見られない。この分子がアロ認識にどのように関わるかを今後詳細に解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験そのものは、非常に順調に進んでいるが、ホヤのアロ認識機構は、当初予想していた以上に複雑で、解析がかなり困難となっている。当初、s/v-Themis-A/Bという2ペアのThemis間相互作用が重要であると考えていたが、locus Bに存在する新規因子s/v-Themis-B2/C(当初Cと呼んでいたが、B2という命名が適切と判断)もアロ認識に関わるらしいという結果を得た。しかし、結果の解析は容易ではない。さらに、カチオンチャンネルドメインを有するBとB2のアレルと比較して、イオンチャンネルドメインを持たないAのアレルの重要性が低いのではないか、という予備的知見も得られている。アブラナ科においては、雄性と劣性のアレルが存在するという報告もあるが、ホヤにおいてもアレル間で優劣関係が存在する可能性が考えられる。さらに、AとBのB2の3つの遺伝子ペアが関わると解析は一層困難となる。そこで、今後は、タンパク間相互作用の解析や遺伝学的解析から少し方針転換し、この遺伝子を破壊することでThemisのアロ認識への関与を証明する実験を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、順遺伝学的解析によって同定されたs/v-Themis-A/Bが、真にホヤのアロ認識に関与することを証明することにある。その目的達成のために、今までアレル特異的タンパク質間相互作用に焦点をあててきた。しかし、解析が進むにつれ、その解析が容易ではないことが分かってきた。そこで、平成25年度は、従来の研究計画を推進する一方で、遺伝子破壊によってThemisの重要性を解析する計画も進める予定である。
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