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2011 年度 実績報告書

アブラナ科植物におけるアロ認識機構の解明

計画研究

研究領域動植物に共通するアロ認証機構の解明
研究課題/領域番号 21112003
研究機関奈良先端科学技術大学院大学

研究代表者

岩野 恵  奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50160130)

キーワードアブラナ科植物 / 自家不和合性 / Arabidopsis thaliana / カルシウムイオン / Ca^<2+>シグナリング系 / プロトプラスト
研究概要

被子植物の多くは、自家不和合性として知られるアロ認識機構を有し、遺伝的に異なる同種異個体と選択的に受精することで、種の遺伝的多様性を維持している。申請者は、アブラナ科植物において、このアロ認識が花粉表層のSP11リガンドと雌ずい乳頭細胞膜上のSRK/MLPK受容体複合体との相互作用を介して行われていることを明らかにしてきた。さらに最近、自家受粉時の乳頭細胞内で、Ca^<2+>濃度の急激な上昇とアクチンの脱重合が起きることを明らかにした。Ca^<2+>濃度の上昇とアクチンの脱重合はこれまで異なるアロ認識機構を持つとされてきたケシ科植物の自家受粉時の花粉内でも観察されており、さらに本領域代表者の澤田らにより原索動物ホヤのアロ認識にもCa^<2+>の関与が見出されたことから、申請者は動植物のアロ認識に共通する機構としてCa^<2+>シグナリング系の関与を提案している。そこで、本研究では特にCa^<2+>シグナリング系に着目し、乳頭細胞内にSRK/MLPK受容体のリン酸化という形で伝えられた自己花粉の情報がいかにしてCa^<2+>濃度の上昇を引き起こすのか、またこの上昇がいかにしてアクチンの脱重合を引き起こし、自家花粉の吸水・発芽を阻害するのか、アブラナ科植物のアロ認識機構の全貌を明らかにすることを目的とする。今年度までの研究により、自家不和合性を付与したシロイヌナズナを利用して、乳頭細胞特異的発現遺伝子群や和合・不和合受粉時特異的発現遺伝子群を同定した。また、新規の乳頭細胞Ca^<2+>モニタリング系や、乳頭細胞プロトプラストによる薬理学的解析系の構築に成功した。その結果、自家受粉時には、SRKとSP11との相互作用により乳頭細胞内でCa^<2+>濃度上昇が引き起こされることと、Ca^<2+>濃度上昇が直接自己花粉の拒絶を誘導することを示唆した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マイクロダイセクション・マイクロアレイ解析による乳頭細胞特異的発現遺伝子群や和合・不和合受粉時特異的発現遺伝子群の同定に時間を要したために、候補遺伝子の機能解析が若干遅れている。しかし一方で、乳頭細胞プロトプラストの調製に成功し、in vitro実験系が構築できたことから、動物細胞のCa^<2+>シグナリング実験と同様な薬理学的解析が可能になった。これにより、Ca^<2+>シグナリング系に関与する分子の同定が順調に進むことが期待できる。

今後の研究の推進方策

本申請では、以下の解析を行い、アブラナ科植物のアロ認識機構の全容を明らかにすると共に、動植物のアロ認識機構の共通点と相違点を明らかにする。
1)乳頭細胞プロトプラストとレーザーマイクロインジェクション法による薬理学的解析によりアロ認識時におけるCa^<2+>輸送体の性状を明らかにする。
2)マイクロダイセクション・マイクロアレイ解析で同定されたアロ認識情報伝達系の候補遺伝子について、候補遺伝子破壊株の作成と表現型解析、GFPモニタリングによる候補分子の挙動解析、FRET・BiFCによる候補分子とMLPK/SRKとの相互作用解析、免疫電顕による候補分子の局在解析を行ない、アロ認識との関連を調べる。
3)EMS処理した自家不和合性シロイヌナズナについて、自家和合復帰突然変異体の探索を行ない、得られた変異体についてタイリングアレイを行なうことにより、原因遺伝子の同定を行なう。
4)リン酸化タンパク質や細胞膜マイクロドメイン構成タンパク質のプロテオミクス解析により、アロ認識のシグナル伝達に関わるタンパク質について生化学的探索を行なう。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Self/non-self discrimination in angiosperm self-incompatibility2012

    • 著者名/発表者名
      Iwano, M. and Takayama S.
    • 雑誌名

      Curr Opin Plant Biol.

      巻: 15 (1) ページ: 78-83

    • DOI

      10.1016/j.pbi.2011.09.003

    • 査読あり
  • [雑誌論文] HMG domain containing SSRP1 is required for DNA demethylation and genomic imprinting in Arabidopsis2011

    • 著者名/発表者名
      Ikeda, Y., Kinoshita, Y., Susaki, D., Ikeda, Y., Iwano, M., Takayama, S., Higashiyama, T., Kakutani, T. and Kinoshita, T.
    • 雑誌名

      Dev Cell

      巻: 21 (3) ページ: 589-596

    • DOI

      10.1016/j.devcel.2011.08.013

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Glycosylation regulates specific induction of rice immune responses by Acidovorax avenae fiagellin2011

    • 著者名/発表者名
      Hirai, H
    • 雑誌名

      The Journal of Biological Chemistry

      巻: 286 ページ: 25519-25530

    • DOI

      doi:10.1074/jbc.M111.254029

    • 査読あり
  • [学会発表] Molecular mechanisms of self-incompatibility in Brassicaceae2012

    • 著者名/発表者名
      Iwano, M.
    • 学会等名
      XXII International Congress on Sexual Plant Reproduction
    • 発表場所
      University of Melbourne (Australia)(招待講演)
    • 年月日
      2012-02-14
  • [学会発表] アブラナ科植物の受粉過程におけるCa2+の関与2011

    • 著者名/発表者名
      岩野恵
    • 学会等名
      第12回医学生物学電子顕微鏡シンポジウム
    • 発表場所
      浜松市駅ビル「メイワン」、(静岡)(招待講演)
    • 年月日
      2011-11-26
  • [学会発表] アブラナ科植物受粉過程の超高圧電顕トモグラフィー解析2011

    • 著者名/発表者名
      岩野恵
    • 学会等名
      超高圧電子顕微鏡センター医学・生物学系共同利用研究報告会
    • 発表場所
      大阪大学(大阪)
    • 年月日
      2011-11-22
  • [学会発表] アブラナ科植物乳頭細胞の三次元電子線トモグラフィーによる解析2011

    • 著者名/発表者名
      永井里奈
    • 学会等名
      植物電子顕微鏡若手ワークショップ2011
    • 発表場所
      理化学研究所(神奈川)
    • 年月日
      2011-11-21
  • [学会発表] 電子線トモグラフィーによる植物細胞オルガネラの可視化技術の開発2011

    • 著者名/発表者名
      岩野恵
    • 学会等名
      植物電子顕微鏡若手ワークショップ2011
    • 発表場所
      理化学研究所(神奈川)(招待講演)
    • 年月日
      2011-11-21
  • [学会発表] アブラナ科植物自家・他家受粉過程で機能するCa2+輸送体の探索2011

    • 著者名/発表者名
      岩野恵
    • 学会等名
      第27回医学生物学電子顕微鏡技術学会
    • 発表場所
      四国大学(徳島)
    • 年月日
      2011-05-14

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公開日: 2013-06-26  

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