本研究は、ホヤなどの海産生物を用いて、動植物のアロ認証機構の研究システムや技術の開発を目的に進めた。まず、単純な構造をもつホヤ精子が卵由来の精子活性化走化性物質を受容し、活性化される分子メカニズムに関して、プロテオミクスの手法を用いて解析した。その結果、細胞内カルシウム応答、cAWP応答に関して、カラクシン、脂質ラフト、14-3-3タンパク質、癌-精巣抗原Sp17の新規機能が明らかになった。一方、カタユウレイボヤにおいてMinosトランスポゾンを用いたトランスジェニック技術を改良し、アロ認証機構の解明に有用な系統の作製を目指した。カタユウレイボヤにおいて、卵でMinosトランスポゾンの転移酵素を発現させる系統を新たに作製し、その系統を用いてゲノム中のトランスポゾンを転移させ、新しい系統を作製する技術を確立した。この系によりエンハンサートラップ系統並びに挿入変異体を単離することが可能である。この系は特に精子で機能する遺伝子の挿入変異体の単離に効果的であり現在そのスクリーニングを開始している。ホヤ以外では、棘皮動物ウニの一種バフンウニでのトランスポゾン技術の確立を目指し、このウニで活性を有するトランスポゾンの探索を進め、Minosトランスポゾンが切り出し及び転移の活性を示すことを突き止めた。
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