研究領域 | 動植物に共通するアロ認証機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
21112004
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
稲葉 一男 筑波大学, 生命環境科系, 教授 (80221779)
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研究分担者 |
笹倉 靖徳 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10400649)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | カラクシン / 精子走化性 / ホヤ / トランスジェニック技術 / プロテオミクス / 分子イメージング / 受精 / ダイニン |
研究実績の概要 |
受精研究の歴史の中で海産動物を用いた研究は古く、受精分野の基礎となっている多くの知見は海産生物を用いた研究により得られたものである。本研究では、プロテオミクス、トランスジェニック技術といった基礎海洋生物学に導入されはじめた新技術を用いて、受精時の分子認証に関わる新規分子の同定と機能解析を進めることを目的とする。特にプロテオミクス、バイオイメージング、およびトランスジェニック技術を用いたアロ認証研究を進め、これらの技術のコンビネーションにより、精子活性化、走化性、卵認識時におけるシグナリングの機能解析を進め、さらに関連分野の領域内共同研究を加速させることを目的とした。平成24年度の実績として、まず研究代表者は、新たに同定された精子鞭毛のカルシウムセンサータンパク質であるカラクシンが、分子モーターのカルシウム依存性制御因子であり、精子鞭毛の波形を制御することにより、卵への走化性に重要であることを突き止めた。また、カラクシンがツボカビなどの鞭毛菌類まで存在していること、植物の系統ではカラクシンと性質は似ているものの、分子系統的に全く異なるカルシウムセンサーが用いられていることを明らかにした。研究分担者は去年度に引き続いてカタユウレイボヤにおいて遺伝子ノックアウト法への導入を進めた。本年度はTALE nuclease (TALEN)法による遺伝子破壊を進めた。TALENのカタユウレイボヤへの発現系を確立し、TALENにより標的遺伝子に高い効率で変異が導入されることを明らかにした。その他エンハンサートラップ系統を用いた遺伝子の方向特異的発現の仕組みやHox1遺伝子の機能を解明した。この他、領域内共同研究により、イモリ、イカ、ウズラ、ゼニゴケ、褐藻類の精子あるいは遊走子に関するイメージングや波形解析で一定の成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計画研究の最重要課題であったカラクシンの機能に関して、プロテオミクスとイメージングを駆使した成果がまとまり学術誌PNASに公表することができた。ホヤにおける遺伝子ノックアウトも本研究の重要課題であるが、TALENにより標的遺伝子に高い効率で変異が導入されることが明らかとなった。また、これらの技術を用いた共同研究が7件進んでおり、そのうちのいくつかは論文発表、学会発表により成果を公表できた。おおむね、計画通りの成果が得られていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を進める期間もあと1年である。今後は、(1)カラクシンの調節機構(特にダイニンリン酸化との関係)と動植物系統との関係、(2)TALENによるホヤ遺伝子ノックダウンを重点的に進めるとともに、これまで進めている複数の領域内共同研究について、成果をまとめ、公表することを優先課題として進める。
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