計画研究
雌性生殖器で起こる精子認証機構に関する研究を行い、次のような成果を得た。まず、精子表層タンパク質ADAM3と相互作用する雌性側の因子を単離・同定するために、成熟型ADAM3をコードするプラスミドを構築して大腸菌で発現させ組換え型タンパク質を調製した。その組換え型タンパク質をベイトとして、子宮と卵管の細胞抽出液から目的の候補タンパク質を同定した。いくつかの候補分子の中で200キロダルトンタンパク質は、ADAM3と有意に結合することがプルダウンアッセイによって明らかになった。この分子はいくつかのIgドメインを含んでおり、おそらくそのドメインとADAM3のディスインテグリンまたはシステインリッチドメインと結合していることが示唆された。この分子に対する抗体を作製して子宮と卵管の免疫染色を行ったところ、それらの上皮細胞で発現していることも明らかになった。現在、そのノックアウトマウスを作製し、最終的な結論を得ることを試みている。一方、卵管膨大部で起こる受精過程でトリプシン様のプロテアーゼが機能しているのかどうかを調べるために、ACRとPRSS21の両方を欠損するマウスを解析した。生体外の実験系では、精子トリプシン様活性は卵丘細胞塊と卵子透明帯の通過に必須であることが明らかになった。しかし、この精子機能不全は雌性生殖器内で部分的に補償されていた。したがって、精子トリプシン様活性は生体内受精過程で重要といえるが必須ではないと結論した。
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Biology of Reproduction
巻: 83 ページ: 359-369
Biochim.Biophys.Acta
巻: 1804 ページ: 1274-1284
http://www.acroman.org/