計画研究
雌雄の生殖細胞による精緻な相互認識機構(アロ認証)は、基本的には雌雄同体の植物や海産動物において、同種異個体間での配偶子融合を促進し、自家和合を排除する仕組みである。一方、哺乳類は雌雄異体であるため、当然、アロの関係にある個体由来の配偶子間相互作用が行われた結果、配偶子融合が起こると考えられる。本研究では、雌雄同体である植物と、雌雄異体である哺乳類の配偶子融合機構の研究を組み合わせることで、“配偶子融合に関わる分子認証の仕組み”の解明に取り組んでいる。今までの研究から、哺乳類の配偶子に必須である2つの膜融合関連因子(卵子側融合制御因子CD9、精子側融合因子IZUMO1)が同定されており、この2つの膜タンパク質を中心として解析を行ってきた。免疫沈降法によりIZUMO1に相互作用する精子膜上のタンパク質として、精巣特異的なACE3を同定した。機能は不明であったため、ACE3欠損マウスを作製すると、IZUMO1の局在に影響を及す因子であることがわかった。CD9変異体を用いた機能領域の解析からは、C末端がCD9の膜融合における機能に必須であることがわかった。さらに解析を進めたところ、CD9およびIZUMO1を介した膜融合のメカニズムには、異物の貪食に類似した機構が関わっていることが示唆された。また、CD9を含んだエキソソームの成分分析を主に脂質について行った結果、特徴的な脂質構成を有していることを明らかにし、さらに、機能アッセイと質量分析を組み合わせることで、融合活性を有する脂質の同定に成功した。
2: おおむね順調に進展している
動植物研究者による共同研究が、成果という形では実っていないものの、個別の研究から一定の成果を出すことができ、新しい概念も提示することができた。
研究の重点を、個別の研究から動植物研究者間での共同研究に置き、分子の解析より、概念の構築とその証明に集中する。また、論文発表を早急に行い、領域全体としての動植物アロ認証についての新しい概念の構築を全力で行う。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Reproductive Medicine and Biology
PLOS ONE
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