研究概要 |
被子植物の配偶子の細胞融合過程については、「どのような機構で2個の精細胞がそれぞれ卵細胞と中心細胞と融合(受精)するのか」という植物の受精の本質的な現象に対する知見は非常に少ない。本課題は、イネ単離配偶子を材料として、in vitro受精系、1細胞分子生物学、高感度オーム解析、レーザーマイクロインジェクションによる配偶子操作などの手法を駆使し、植物における配偶子認識および膜融合過程の分子基盤を明らかにするとともに、動物の配偶子融合機構研究者と双方向の研究を推進することで、動植物の配偶子融合機構を統合的に理解することを目的とする。 本年度は、顕微鏡下で単離したイネ精細胞、卵細胞、受精卵それぞれ3,000細胞、30細胞、30細胞と、密度勾配遠心法による大量調整法を確立して単離した精細胞30,000-60,000細胞を用いたトランスクリプトーム解析を行った。加えて、精細胞120,000細胞と卵細胞300細胞を用いたプロテオーム解析を行った。これらオーム解析の結果を合わせ、上記の機構に関与する候補分子の同定を試みている。さらに、1花粉由来の2個の精細胞の1細胞マイクロアレイ解析も試みており、それぞれの細胞における遺伝子発現プロファイリングを行っている。また、候補分子の機能検定法として、カルシウムやBSAを用いたイネ配偶子融合法の確立を試みている。さらには、核の合一過程を可視化することを目的に、配偶子の核膜および核をGFPなどの蛍光タンパク質で可視化した形質転換イネを作製中である。
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