本研究の目的は、植物受精の分子メカニズムを解析する中で動物受精にも共通する機構を見出し、生物受精の中核的な共通システムを明らかにすることを目的としている。これまでの研究成果として見いだされた高等植物受精因子GCS1(GENERATIVE CELL SPECIFIC 1)は花粉内の雄性配偶子表面で特異的に発現する新規の膜貫通型タンパク質であることが示されており、高等植物の配偶子融合がタンパク質分子によって決定づけられていることを明らかにした世界初の分子である。興味深いことに、GCS1は高等植物のみならず、原生生物(藻類、アメーバ、マラリア原虫など)・無脊椎動物(節足動物・刺胞動物など)にも保存されていることが分かっている。平成22年度はGCS1の分子機能ドメイン同定を目標にして、様々な改変GCS1をGFPの融合遺伝子として作製し、シロイヌナズナGCS1変異株に導入した。その結果、同分子の受精機能において不可欠な膜貫通ドメイン・N末端受精機能必須ドメインを突き止めることに成功した。さらに、過去に報告があったC末端側の塩基性ドメインは受精機能において不要であり、GCS1はN末配列のみでその受精機能を発揮していることを突き止めた。共同研究者である、群馬大学大学院医学系研究科の平井誠講師の協力を得て、マラリア原虫のGCS1においても同様の実験結果が得られたことから、同研究成果を米科学誌PLoS ONEに発表した。
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