研究領域 | 動植物に共通するアロ認証機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
21112008
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
森 稔幸 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (00462739)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 受精 / 有性生殖 / 配偶子 / 膜タンパク質 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、植物受精の分子メカニズムを解析する中で動物受精にも共通する機構を見出し、生物受精の中核的な共通システムを明らかにすることを目的としている。これまでの研究成果として見いだされた高等植物受精因子GCS1(GENERATIVE CELL SPECIFIC 1)は花粉内の雄性配偶子表面で特異的に発現する新規の膜貫通型タンパク質であることが示されており、高等植物の配偶子融合がタンパク質分子によって決定づけられていることを明らかにした世界初の分子である。興味深いことに、GCS1は高等植物のみならず、原生生物(藻類、アメーバ、マラリア原虫など)・無脊椎動物(節足動物・刺胞動物など)にも保存されていることが分かっている。このため、GCS1を基盤とした受精機構の解明は動植物・原生生物における受精の共通中核機構の解明に繋がるものと期待できる。平成24年度は、膜貫通ドメインを欠失したGCS1分子(GAH)をシロイヌナズナ卵細胞で発現させ、その効果を解析した。その結果、GAH発現株においては配偶子融合が著しく阻害され、卵細胞から放出されたGAH分子が受精を阻害したものと考えられた。この結果は雌性配偶子側にGCS1のパートナー分子が存在することを示唆している。さらに、新規に見いだされた雄性配偶子側受精因子Y47の機能解析を行った。Y47はシロイヌナズナの精細胞表面に特異的に発現する膜貫通型タンパク質であることがわかっている。Y47の遺伝子破壊株は不完全な受精様式を示すことから、受精の初期段階(配偶子認識など)に関与することが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果として得られている受精因子GCS1は、動植物・原生生物に共通な受精機構の存在を示唆しており、植物以外の材料を用いた共同研究も含めてその分子機能解析が順調に進行中である。また、GCS1に関与するさらなる雄性配偶子受精因子の探索を目的とした、テッポウユリ花粉生殖細胞の膜タンパク質網羅解析を試みているが、同細胞の全発現遺伝子カタログの作製や膜成分の精製に成功し、作業は順調に進んでいる。新規受精因子Y47の解析においては、配偶子融合に先立つ認識機構への関与が予想されている。現時点では認識機構の検証実験を残すのみとなっており、翌年度の前半には論文発表できる見込みと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Y47の配偶子認識機能の検証として、現在異種間でのY47機能相補性を解析している。Y47が異種間で機能的互換性がないことが示されれば、同分子が種認識に関与することが示唆されるため、植物受精における配偶子認識機構を初めて示すことになると期待されている。シロイヌナズナとその近縁種であるミヤマハタザオを用いてY47の異種間互換性解析を行う。 一方、シロイヌナズナ改変GCS1(GAH)を用いた解析から、雌性配偶子側におけるGCS1パートナー分子の存在が期待されている。GAHにはGFPタグが施されているため、GAH発現株についてGFPを標的にしたpull-downアッセイを用いれば、理論的にはGAHに結合した雌性配偶子側分子を単離することが可能である。問題点としては、大量のシロイヌナズナGAH発現株を栽培する必要があるため、追加の植物栽培装置(人工気象器)を購入するなどの対策が必要となる点である。設置スペースなどの問題が生じるようであれば、他機関の協力も申請する予定である。
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