研究領域 | 天然変性タンパク質の分子認識機構と機能発現 |
研究課題/領域番号 |
21113005
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石野 良純 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (30346837)
|
研究分担者 |
清水 光弘 明星大学, 理工学部, 教授 (80231364)
奥脇 暢 筑波大学, 人間総合科学研究科, 准教授 (50322699)
|
キーワード | 天然変性タンパク質 / 分子間相互作用 / DNA複製 / 転写因子 / ヒストンシャペロン / DNA トランスアクション / クロマチン / ヌクレオソーム |
研究概要 |
アーキアのHefとそのヒトホモログであるFANCMの天然変性領域と相互作用するタンパク質を網羅的に探索した結果、DNA修復に関係すると予想されるヌクレアーゼ(RecJ 様、RNaseH1 様)や損傷乗り越えDNAポリメラーゼなどが候補タンパク質として得られた。現在、これらのタンパク質を精製し、特異的な結合を調べながら、これらの相互作用の生理的な意義付けを考えてモデルを構築した。また、アーキアのHefを用いて、昨年度に引き続いて本領域内の複数の研究室とNMR,AFM,MD-SAXSなどの構造解析を進めた。 出芽酵母において、Ume6はクロマチンを介して、減数分裂初期遺伝子群の転写を制御している。Ume6における転写活性化と抑制に関与する天然変性セグメントを同定した。それぞれのセグメントとIme1、Sin3との相互作用の解析を進めている。一方では、ATTCTとCTGリピートはin vivoでヌクレオソームの形成を促進すること、ヌクレオソームの微細構造はDNA配列によって多様性があることを見出した。さらに、CTGリピートを含むヌクレオソームの結晶構造を3.5Aで決定し、その詳細を解析している。 アデノウイルスクロマチンの制御因子として同定したヒストンシャペロンNucleophosmin/B23について、そのファミリー因子であるNPM3との多量体形成を検討した。B23はホモ5量体を形成するが、NPM3が存在する場合は、B23:NPM3(4:1)の複合体を形成することを明らかにした。また、多量体形成はB23、NPM3のヒストンシャペロン活性に必須であることが明らかとなった。この点に関しては本領域の明石班との共同研究として進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究班は遺伝情報の維持と伝達に関わる重要なタンパク質の天然変性領域の機能解析を行う任務を主として実施している。この目的に正面から向き合い、これまでの研究で天然変性領域が機能に重要な役割を担うことが明らかになりつつあること、さらにそれらの領域に結合するパートナーの同定や、それらの相互作用様式の解明について、おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本学術領域は、正に「新学術」であり、研究手法が決まっていない蛋白質科学の新しい領域を開拓していると言える。当研究班は主として機能解析を担当しているが、機能発現を理解していくためには、構造との関係を明確に示すことができなければならない。現在までに、天然変性領域が機能を発揮する構造基盤が明らかになっていないので、自らの機能解析を推進しながら、構造解析研究グループとの協力関係をさらに強化して、進めていきたいと考えている。
|