計画研究
平成22年度と平成23年度(繰越金があったため)は、天然変成蛋白質NRSFとそのパートナータンパク質Sin3の結合過程を、全原子マルチカノニカル分子動力学法で解明した。NRSFは単体では変成状態にあり特定の立体構造を持たない。一方、Sin3の結合サイトに結合するとヘリックスを形成する。この性質は、coupled folding and bindingと呼ばれており、その結合メカニズムはまだ不明である。我々は、NRSFを変成させ、かつNRSFとSin3を空間的に離して配置し、さらにその周囲を充分な水で取り囲み計算を開始した。その結果、多様な複合体様式が得られた。重要なことは、多様な複合体の中に実験で構造決定された複合体構造(天然複合体構造)が含まれており、それが最安定構造になったことである。次に我々はNRSFとSin3の結合過程を表現する自由エネルギー地形を計算した。その結果、地形上には二つの自由エネルギー障壁があることが判明した。NRSFとSin3が結合した初期では、複合体は非天然複合体構造をとる。それがさまざまな構造変化を重ねつつ天然複合体構造へと移行していく。その際、いかなる構造変化がcoupled folding and bindingの重要なテップであるかを詳細に明らかにした。この結果を科学雑誌(JACS)に投稿し、acceptになった(ページ/巻/年情報は、平成23年度の報告に書く)。さらに我々は、上記の結合過程を蛋白質粗視化モデルにより研究した。粗視化モデル中のパラメータを適切に調節することで、全原子モデルで得られた結果を再現できるようになった。この方向性をさらに進めて、全原子モデルを前提にしなくても、coupled folding and bindingが再現することを目指す。
すべて 2011 2010 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Protein Science
巻: 20 ページ: 187-196
Journal of Computational Chemistry
巻: 32 ページ: 1286-1297
Proc.Natl.Acad.Sci.USA
巻: 107 ページ: 7769-7774
http://www.tsurumi.yokohama-cu.ac.jp/IDP/index.html