計画研究
1.モデル植物の硝酸イオン輸送変異株のCO旦応答の解析野外で一般的な「恒常的窒素不足状態」を実験室内に再現して高CO_2環境への応答を調べるため、硝酸イオン能動輸送に欠陥をもつシロイヌナズナ変異株を15mMの硝酸イオン濃度で栽培して「培地中には十分な窒素があるが、植物体内への窒素の流入が制限された状態」をつくり、CO_2濃度(280ppmと780ppm)の影響を調べた。野生株の場合、高CO_2条件によって地上部と根の両方の生長が促進されたのに対し、変異株では根の生長のみが促進された。低CO_2条件下では変異株でもgFW当たり20-30μmolsの硝酸イオンが植物体内に蓄積したが、高CO_2条件下では対応する野生株レベルの数分の1(5μmols)に低下するとともに、野生株では見られないアントシアニンの蓄積が観察された。以上のことから窒素の供給が制限された条件下では、高CO2条件によって窒素欠乏が顕在化すること、および、そのような条件下で根系の選択的生長促進が起こることが示された。2.野生植物の窒素感受性の解析一方、貧栄養の湿地に分布する植物は元来高濃度の窒素に感受性であり、CO_2に随伴して増加するNOx由来窒素め影響が無視できない。モウセンゴケ類については近縁種間の窒素感受性の差異と生育環境との関係を示唆する結果を既に得ているが、サギソウもモウセンゴケと同程度以上の窒素感受性をもつことを栽培実験によって確認した。トウカイコモウセンゴケから次世代シーケンサを用いて収集した硝酸還元酵素の複数のcDNA配列を解析した結果、いずれもCO_2欠乏条件下での翻訳後活性抑制に関わるセリン残基を保持していることがわかり、窒素感受性の原因として想定していた「硝酸還元酵素による亜硝酸イオンの過剰生産」の可能性は低いと結論した。
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