研究領域 | 植物生態学・分子生理学コンソーシアムによる陸上植物の高CO2応答の包括的解明 |
研究課題/領域番号 |
21114004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳澤 修一 東京大学, 生物生産工学研究センター, 准教授 (20222359)
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研究期間 (年度) |
2009-07-23 – 2014-03-31
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キーワード | 植物 / 高CO2応答 / 代謝物 / 窒素 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
本研究は、二酸化炭素濃度、窒素栄養環境、窒素同化能力の違いが植物の代謝バランスに与える影響を評価することを目的とする。このために、光強度や二酸化炭素濃度や無機態窒素の種類と濃度を変化させた様々な栄養環境で栽培したシロイヌナズ野生型株の解析によって二酸化炭素濃度と窒素栄養環境が及ぼす効果を確立し、また、転写因子Dof1の遺伝子を導入することによりアンモニウム同化能力を強化した形質転換シロイヌナズナを用いたメタボローム解析も行なってきた。今回、このアンモニウム同化能力を強化した形質転換シロイヌナズナのメタボローム解析が終了し、その結果、窒素同化のための炭素骨格の供給量を増大によって強化されたアンモニウム同化能力は、二酸化炭素濃度の上昇によって増大する炭素骨格の供給量に見合った程度の代謝バランス変動を引き起こすが、二酸化炭素濃度が高くともアンモニウムが十分に供給されない環境では野生型シロイヌナズナとほぼ同じ代謝バランスとなることを明らかにした。また、転写活性化因子NLPに転写抑制ドメインを付加して転写抑制因子に変換したもの(NLP6-SUPRD)を発現させたシロイヌナズナでは窒素同化に関わる多くの酵素遺伝子が大幅に減少していることから、窒素同化能力が低下している植物として、このNLP6-SUPRDを発現させたシロイヌナズナの予備的メタボローム解析を行った。その結果、この植物体では、個体サイズの著しい減少が起こるが、通常の二酸化炭素濃度では代謝物組成には野生型シロイヌナズナとの間で大きく異ならないという予備的知見が得られた。しかしながら、高二酸化炭素濃度では代謝物組成に大きな差は認められないものの幾つかの代謝物の含量に野生型株とNLP6-SUPRDを発現しているシロイヌナズナの間で差があるという予備的知見も得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンモニア同化能力を強化した形質転換シロイヌナズナ(転写因子Dof1をコードする遺伝子を導入したシロイヌナズナ)のメタボローム解析が終了しており、また、新規材料であるNLP6-SUPRDを発現させたシロイヌナズナの予備的なメタボローム解析も行われていることから、ほぼ予定通りに進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
NLP6-SUPRDを発現させたシロイヌナズナを通常の二酸化炭素濃度環境と高二酸化炭素濃度環境で栽培し、これを用いて詳細なメタボローム解析を行う。これによって、窒素同化能力低下植物中の代謝バランスに及ぼす高二酸化炭素濃度の影響を明らかにする。次に、このメタボローム解析の結果と先のDof1遺伝子発現植物のメタボローム解析の結果を総合的に判断し、また、主成分解析やクラスター解析なども実施することにより、遺伝的理由による窒素同化能力の違いが高二酸化炭素濃度応答にどのような影響を及ぼすか明らかにする。
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