計画研究
高CO_2条件、高C/N条件でのオミクス解析に基づく形態的応答に関わる遺伝子同定と機能解析昨年までの研究により、生育環境中のCO_2濃度の上昇に応答し成長が促進されるのに先んじて、メリステムを含む茎頂部分のtZ型サイトカイニンの内生量が増加することを明らかにした。一方、tZ生合成を担うCYP735A遺伝子の破壊株(cyp^<735ala2>二重変異体)ではシュートメリステムが野生型に比べ小さくなるとともに、葉の面積当たりの細胞数が少なくなり、葉のサイズも小さくなるなど、高CO_2応答とは逆の表現を示すことを明らかにした。そこで、今年度はホルモン関連の機能欠失型変異体について高CO_2に対する地上部のサイズ変化などについて検討した。その結果、cyp^<735ala2>二重変異体では形態的な高CO_2応答が著しく抑えられていた。このことは高CO_2条件への形態的応答のシグナルの1つとしてCYP735Aを介したtZの合成が関わっていることを示唆している。野生型とcyp^<735ala2>二重変異体地上部のC/N比を測定したところ、二重変異体では野生型に比べ、C/N比が通常条件で低いこと、さらに高CO_2条件でより減少していた。この減少の要因は炭素含量が高CO_2条件で減少することによる。この生理学的解釈についてはCとNの内訳(構造炭素/非構造炭素解析、アミノ酸組成解析など)や、地下部でのC/N比とも合わせて考察する必要がある。C/Nバランス条件により制御されるサイトカイニン生合成酵素遺伝子の解析シロイヌナズナでの知見を踏まえ、高CO_2処理条件におけるサイトカイニン合成系遺伝子の発現を調べたところ、OsIPT4の発現が根で上昇するとともに、サイトカイニン内生量も根で増加していた。一方、メリステムを含む茎頂部分においてOsIPT8の発現が約3倍に上昇していた。以上の結果は、OsIPT4,OsIPT5に加えOsIPT8も含めた高CO_2条件でのサイトカイニンを介した成長制御システムについて検討する必要性を示している。
2: おおむね順調に進展している
cyp^<735ala2>二重変異体における高CO_2に対する形態的な応答が著しく抑えられていたことを明らかにし、高CO_2条件への形態的応答のシグナルの1つとしてCYP735Aを介したtZの合成が関わっていることを示すことができたため。
CYP735A以外のサイトカイニン生合成、情報伝達に関わる種々の変異体での高CO_2応答の違いを詳細に比較検討するとともに、接ぎ木実験などとも組み合せて、高CO_2へのtZを介した形態的応答の個体レベルでの統御システムについて知見を得る。
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